北海道北海道の郷土料理

炉端焼き

北海道 炉端焼きと北の海の幸と陸(おか)の幸

焼くということ

およそ人類が生み出したもっともシンプルでもっとも素晴らしい調理法は「焼く」ことではないだろうか。ヒトが「火」を手にした時、人類の「料理」の歴史は始まったが、「火」を使う調理の中でも、やはり「焼く」という「火」をダイレクトに使った調理法はもっとも原始的でありながらも、素材の持ち味を生かしつつ旨みを閉じ込め、かつ生臭さを消してその上殺菌までしてくれるという願ったり叶ったりの調理法なのである。

初期の人類にとって「火」は発見であったろうし、「焼く」という行為、もしくは「焼いた」物も発見であったに違いない。落雷や火山、乾燥と高温による自然発火などでおきた炎から「火」を「発見」し学び、またそれらの自然発火によって、例えば逃げ遅れた動物の焼かれた肉を「発見」し、試しに食べることによって、その美味しさをも「発見」し学んだのであろう。生で食べるのとは又違った美味しさ。香り。色。それらはヒト(または類猿人)をして素材を「焼く」ことに目覚めさせ、何世代を経て、(一部の生食をする素材を除き、)物を食べる時には焼くという行為が一般的になっていったものと推測される。それは何百万年を経た今もなお、当初とあまり変わらない調理メカニズムで存在し、依然として我々の舌を喜ばせる。煮る蒸す揚げる等その他の調理法も勿論素晴らしいが、この「焼く」という極めてシンプルでありながら、「調理」という意味ではもしかすると一番難しいのかもしれない調理法でもって我々は日々素材を「変化」させ、摂取し、身体と心に栄養と旨みを取り込んでいるのだ。

さて、その「焼く」という調理法、一口に言っても、焚き火や鉄板やオーブンや鍋類を使用してなど様々な方法があるが、中でも一番優れているといわれているのが「炭」を使った「焼き」である。「炭」は簡単に言うと木や竹などを高温で長時間蒸し焼きにして水分を飛ばし炭化させたもの。水分が含まれていないので燃焼時の温度が高く火力も一定しているので素材を調理するのに適しているのである。また炎を出さず、遠火の輻射熱なので、素材の表面だけ焦げて中が生という生焼け状態になりにくく、燃焼時に近赤外線を多く発するので熱効率がよく、素材のうまみを逃がさず損なわずに火を通すことが可能となる。

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勿論これらは研究によって解明されてきた科学的な面からの説明であって、炭自体は30万年前の古代遺跡からも発見されているし、メカニズムを知らなかった人類も経験的に、炭で焼いたものは美味いとわかっていたのだろう。だからこその数十万年という歴史。とはいえ、そもそも調理用の熱源の選択肢が他にあまりなかった、という話はさておき、実際に料理を味わう者にとっては熱効果がどうとか、輻射熱がどうなどというのは意味がないことで、根本的にして最大の関心事は美味しいか美味しくないか、なのだ。

そう、非常に前置きが長くなって恐縮だが、だからこその「炉端焼き」なのである。

炉端焼き

炉端焼きは仙台発祥といわれる、囲炉裏端で素材(当初は主に野菜類)を焼いて客に提供するという形態のお店。それが釧路に伝わり、今や釧路は炉端焼きのメッカとなっている。昔ながらの、囲炉裏を囲うようにして客席があり、炭火で注文の品を焼いてお客に提供するという店もあるが、焼肉のように、客席ごとに網をのせた炭火のコンロがあり、客が自ら好きなように焼いて食べることが出来るお店も人気だ。選べる素材は、北海道ならではの、ホッケ、ホタテ、カニ、エビ、ししゃも、コマイなどから、ジャガイモ、とうきび(とうもろこし)、シイタケなどなど。旬の素材を目の前で焼いて熱々を味わうことが出来る。

じゅーじゅーと、新鮮な海の幸、陸の幸、山の幸を炭火で焼いて、醤油をはらり、バターをとろり。磯のジュースをこぼさぬように。大地の香りを取り込むように。むさぼりついて、頬張って、しゃぶって、すすって、咀嚼して。むしゃむしゃもぐもぐごくん。これはもう、たまらない。

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