ミヤマカラスアゲハ
静岡県富士宮市上稲子、県道398号線を進んでいくと「天子の七滝」と呼ばれる七つの滝がある。標高1330メートルの天子ヶ岳を水源として流れる稲子川にかかる滝だ。
「清涼の滝 」「観音の滝 」「不動の滝 」「丸渕の滝 」「しずくの滝 」「瀬戸の滝 」「魚止の滝 」と、それぞれ幅、落差とも数メートルと、規模はそれほど大きくはないものの、緑豊かな自然の中、さらさらと流れ落ちる様は清涼感があって気持ちいい。
そんな「天子の七滝」近くの道端で、美しい色をした薄青い筋の入った黒いものがひらひらと行き過ぎるのが目に入った。目で追いかけると、それは一匹のミヤマカラスアゲハだった。
光輝くような薄青色の文様は、まるで宝石のよう。トルコ石や、アクアマリン、ブルートパーズ、ラピスラズリのような様々な青が黒い羽根に入り混じる。水分補給をしに来たのだろうか。湿った地面の上に口吻をちょんちょんと何度かつけて、そしてまたひらひらと飛んで行った。木々が鬱蒼と生い茂る中、鮮烈な輝きを放ちながら青色の羽が飛んでいく様は、夢の中のような瞬間だった。