アオガエルと傘
公開日: 2015年4月21日 | 最終更新日 2015年6月22日
子供の頃から、なぜだかアオガエルが好きだ。ちょこんと座っているその様子。時々眠そうにする大きな黒目。悟っているんだか、ぼんやりしているんだか、ただそうしているだけなのだかよくわからないけれど、葉っぱの上やら地面の上やらにじっと佇んでいるその姿。嫌いな人はねっとりとしたあの肌やじめっとした感じが好きではないらしいのだけど、それさえもかわいらしい。
宮崎県日南市酒谷の「道の駅酒谷」で出会ったアオガエルくん。朝から雨が降り続く中、さすがのアオガエルも雨に飽きたのか、雨のあたらない場所に佇んでいた。お手洗いに入る前にその存在に気が付いたのだが、その時はいかんせん膀胱が破裂しそうな「緊急事態」。そそくさとお手洗いに入り無事「こと」を終わらせ、手を洗って出てくるとまだそこにちょこんと座っていたので、屈んで覗いてみた。
しばらくお互いに目を合わせる。動かない。気温が低いわけではないので、寒くて動けないというのでもないみたい。そのまま、車に戻ろうとも思ったのだが、最後に傘の先を左手前にそーっと差し出してみた。その途端、それまで動かなかったアオガエルくん、餌か何かと思ったのか、ぴょんと傘の先に飛び乗ってきた。すぐ降りるかと思いきや、またそこでじっと動かなくなった。困った。これじゃ、傘がさせない。横になっている傘を、柄の方を下にしてゆっくり持ち上げてみる。するとアオガエルくんは器用に少しずつ動きながら、結局傘の先っぽに座ってしまった。
写真はその時に撮った一枚。根競べということでもないが、急いでいるわけでもなかったので、しばらくそのままこちらもじっと眺めていた。アオガエルくんも何かを眺めている。
お手洗いの前で傘の先を眺める大人とその傘の先で何かを眺めるアオガエル。はたから見たらきっとおかしなその光景は、やがてアオガエルくんがぴょんと一飛び、どこかに去っていったことで、終わりを告げたのであった。