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磯料理・桜えび料理 くらさわや

桜えび

正調「桜えびの美味しい食し方」

有名店だからといって全てのお店が美味しいわけではないのは多くの方が経験として知っていらっしゃるのではないだろうか。一体どうしてこのお店は人気があるのだろうと訝しんでしまう事さえ少なくない。昔は美味しかったのか、それとも好みの問題なのか・・・。しかし、その一方で、噂通りのその味と雰囲気の良さに「なるほど・・・だから人気があるのか・・・うーむ」と思わず納得しながら唸ってしまうこともまた少なからずあるのも確かだ。いずれにしても、有名であるからにはやはりそれ相応の理由がある。

由比の名店の誉れ高い、ここ「くらさわや」は後者の方。美味しさと雰囲気のよさで唸ってしまうお店だ。お店の前には予約を取らない(繁忙期のみ。通常は予約可。)有名店がゆえの宿命、行列が出来ている。シーズン時期の休祝日は特に混雑するという。開店前からお店の前には早くも人が並び始め、昼時など、平日であっても店の内外に何人もの人々が並んでいる状態。

しかし、世間には並んでまで食べる価値のない店も少なくない中で、ここは並んででも食べる価値があると、食べながらそして食べ終わった後もつくづく思ってしまうような店なのである。

くらさわや

江戸の雰囲気が今もそこかしこに残る東海道「由比」。車一台がやっとすれ違えるほどの旧東海道に面して、「くらさわや」はある。由比の駅から東海道を興津方面に歩いていけば、(お店が開店した後ならば)決して迷うことは無いだろう。閑静で人気(ひとけ)のあまりない通りにあって突如行列が出来ている店が見えてくるからだ。

桜えび・くらさわや

小一時間ほどだろうか、暖かな日差しを浴びながら軒先で待っているとようやくお声がかかる。お店の中は明るく和やかな空気。美味しいものを出すお店の雰囲気はどこもなんとなく似ている。柔らかくて和やかでいい気が流れているのだ。それは美味しいものを食べているお客さんが作り出すものなのかもしれないし、そんな美味しいものを提供しているお店自体が醸し出しているものなのかもしれない。いずれにしても、食べる前から心地よくなる穏やかで明るい雰囲気。勿論、窓から見える景色がそれに何役も買っているのは言うまでもない。大きく取られた窓の向こうには青々とした大海原「太平洋」が広がっている。こんな景観を見ながら暮らせたらどんなにステキだろう。風と光を受けながら、頬杖ついてぼんやりと考え事をして過ごす日々。時折聞こえる海鳥の声。雲は天空高くたゆたう。人工物で鈍ってしまった「ヒト」の「気」は、太古の昔の生まれ故郷である大海原で初めて真に再生するのかもしれない。母なる星の母なる水。幸せは海からやってくる。

そんな事を考えているうちに、最初の一品が来た。「生桜えび」。桜えびを食べに来て、これがなくては始まらない。

桜えび・くらさわや

黒くて小さな沢山の目がこちらを見ている。ついぞ何時間前には、海の中で空を見上げていたであろう目が、こちらをじっと見ている。箸で何匹かを挟むようにして摘み、醤油も何もつけずに口に含んでみる。ほのかな塩気と優しい甘み。そして太平洋の輝きを内包した旨みがじんわり口の中に広がる。むっちりとしていながら、軽やかな爽やかさもあってどこか暖かくて懐かしい。

桜えび・くらさわや

そして、釜揚げ。塩水でさっとゆがいたものだという。その上に大根おろしがのせられている。生とはまた違った旨みだ。生特有のとろける感じがない代わりに、さっぱりとした中にふんわりとした香りがある。桜色の殻をまとった上品な「しらす干し」のような感じだ。生もよいがこれはこれでいける。生ものが駄目な人にはむしろこちらの方が食べやすいかもしれない。

桜えび・くらさわや

続いて、桜えびの酢の物。きゅうりともずく、そして針生姜がいいバランス。桜えびの味を損ねずに引き立てている。甘すぎたりする酢の物が多い中、優しい甘みと酸味と合わさった上品な酢の物。おススメとしては(懐石料理的には邪道だが)来た順番に全て食べてしまわずに、この酢の物は少し残しておく食べ方。この後来るかき揚げの合間に箸休め的に食べるとこれがまた両者が引き立って美味しい。

桜えび・くらさわや

そして真打ち「桜えびのかき揚げ」の登場だ。桜えびと言えばこの「かき揚げ」という人も多い。この後控えている二品も美味しいし、出番も「トリ」ではなくまん真ん中なのだが、その存在感とインパクト、そして味はこの一品に尽きるだろう。ほとんど衣がついていないのではないかと見紛うほどにさっくりと軽やかに仕上げられたかき揚げは、板さんの確かな腕を証明している。時を止められてしまったかのように、命弾ける小さな桜色の生き物達が踊りながらそのままの形で固まっている。きっと全ては一瞬の出来事。一秒後には世界は変わってしまうのだ。タレではなく、塩で食べるかき揚げはこれでもかと言うくらいに桜色の旨みがぎっしりと詰まっていて、それが舌の上でぷちぷちと音を立てながら、周囲に官能を振りまいていく。口の中で、桜えび達は目合い(まぐわい)感極まって咽喉へと滑り落ちてゆく。それは背中に吹きかけられた沫緒の吐息のように、甘く優しく愛おしい。天恵の飛まつは脳の中で飛び散ってゆく。

桜えび・くらさわや

一見すると海老真薯のように見える「桜えびまんじゅう」。泡とカマボコの中間のようなふんわりとした食感の桜えびのすり身の上に結び三つ葉がちょこんと鎮座して実にかわいらしい。味も見た目同様、可愛らしく上品。ほっとする一品だ。

桜えび・くらさわや

そして「トリ」を飾るのは「桜えび釜飯」。大盤振る舞いの二枚のかき揚げですっかり満腹気味のお腹にもすっすと入っていく。艶やかなご飯の一粒一粒に桜えびの豊かな香りと甘みが浸み込んでいて、思わず笑みがこぼれる程に美味しい。炊飯器では味わえないおこげの香ばしさも魅力。

桜えび・くらさわや
桜えび・くらさわや

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Japan Web Magazine 編集部

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