石山寺
公開日: 2008年1月7日 | 最終更新日 2023年6月23日
しとしととそぼ降る雨、真っ直ぐに伸びた石畳の参道。森厳な雰囲気の中、「ひらめき」という名の精霊がそこかしこに宿っている。創造する人々はそれを「インスピレーション」と呼ぶのかもしれない。それは沢山の人々に様々な思いを想起させ、沢山の人々の心に何かを残した。歌人は歌を詠み、作家は物語を書いた。
人の生は一度きり。しかし思いは複雑に絡み合う。
笑って全てを忘れることが出来たなら、切なさが息をする暇はないものを。
紫式部ゆかりの寺「石山寺」
平安時代、貴族や皇族の間では様々なものが流行しました。
蹴鞠、歌合せ・薫物合せ・小弓合せ・力競・歌合・歌絵合・詩合せ・扇合せ・小筥(こばこ)合せ・琵琶合せ・草紙合せ・絵合せなど、「物合せ」と呼ばれる競いものなどの風流な遊び、碁・双六・将棋、舞楽に占い。中でも極楽往生を願う貴族皇族たちが特に熱中したのが、「~詣」と呼ばれる寺院への参拝でした。
奈良の「長谷詣」や京都の「清水詣」と並び人気が有ったのが「石山詣」。宮廷の女官の間では、観音堂に篭り一晩読経をしながら過ごすという習慣が流行ったといいます。その舞台になったのが滋賀県大津市、琵琶湖から唯一流れ出る川「瀬田川」のほとりにある「石山寺」です。
聖武天皇の発願で、僧の良弁によって747年(天平19年)に開山されたと伝えられる石山寺は、その名を本堂の下にある天然記念物の巨石「硅灰石(けいかいせき)」に由来しています。日本でも有数の観音霊場として知られ、西国三十三箇所観音霊場第13番札所。本尊は如意輪観音、真言系仏教宗派のひとつ東寺真言宗の寺院です。
この石山寺に篭り、日本文学史上最高傑作と言われる「源氏物語」を生み出したのが紫式部です。
紫式部は「源氏の間」と呼ばれる部屋や石山寺の庭園で「源氏物語」の構想を練ったといいます。紫式部の他にも、「枕草子」の清少納言、「蜻蛉日記」の藤原道綱母、「和泉式部日記」の和泉式部、「更級日記」の菅原孝標女という、錚々たる顔ぶれが、「石山詣」や「石山寺」について、その著作や歌の中で言及しています。
また東大門、多宝塔を寄進したと伝えられる源頼朝や、松尾芭蕉、そして島崎藤村に至るまで、石山寺にゆかりのある歴史上の有名人は枚挙に暇がないのです。
石山寺は「花の寺」としても有名です。梅、桜、菖蒲、つつじ、サツキ、牡丹などの花々が、その季節に咲き乱れます。秋の紅葉や月の美しい寺としてもその名を轟かせています。
紫式部が源氏物語の構想を練ったと伝えられる部屋。源氏26歳から28歳頃を描いた「須磨」「明石」は、石山寺から見る中秋の名月に感動した式部が一息に書きあげたといいます。
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石山寺(いしやまでら) DATA
- 場所: 滋賀県大津市石山寺1-1-1
- 交通(公共交通機関で): 京阪石山坂本線石山寺駅から徒歩10分
- 交通(車で): 名神瀬田東IC・瀬田西ICから車で10分
- 駐車場: あり
- 期間: 通年
- 拝観時間: 8:00~16:30(最終入山16:00)
- 休み: 無休
- 拝観料金: 大人600円、小人250円
- 問い合わせ: 077-537-0013
石山寺