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蔦温泉

蔦温泉

十和田の森の一軒宿

浴槽の底に敷かれた板の隙間から、時折思い出したようにぽこぽこと泡が上がってくる。木造の建物の外では深々と雪が降り続け、あたりは静寂に包まれている。誰もいない真夜中のひと時。朧な世界が優しく顔を見せる。刺激はいつか飽きてしまう。しかし、きっと、安堵は飽きることはない。ふっと吐き出した息が湯気と共に天井へと昇っていくのをぼんやりと見やりながら、何かを考える。それは、湯の底から湧いてくる泡のように、浮かんでは消えていく。柔らかで透明な湯の中で、指先から魂が少しずつ溶けていく。穏やかで心休まる闇は、光の中でしばし呼吸を止めた。幸せな空気が全身をゆっくりと包みこんでいく。

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心を解きほぐしに行こう

高知生まれの明治の文人、「大町桂月」は酒と旅を愛した。時には朝鮮半島や中国大陸にまで足を延ばしながら、日本各地を旅し、酒を飲み、温泉に浸かり、美しい文体で多くの紀行文を書いた。特に北海道各地を旅し、土地ごとの風景を独自の目線で切り取り、文章を残している。「層雲峡」の名付け親でもある。

そんな大町桂月が特に愛したのが十和田湖から奥入瀬渓流にかけての自然だ。初秋の十和田を旅した桂月は、そのあまりの美しさに心を打たれ、「日光に勝るとも劣らぬ」と絶賛、全国にその名が知れ渡ることとなる。現在では道も整備され、多くの観光客が訪れるが、大町桂月が旅した当時は知る人ぞ知る秘境であった。その十和田湖から奥入瀬渓流沿いに102号線を40分ほど北上すると、八甲田地方で最古といわれる温泉がある。その名は蔦温泉。ブナの原生林の中にひっそりと佇む一軒宿の温泉だ。開湯は1147年と伝えられるから、実に860年以上前から人々に親しまれてきた古湯である。

明治41年に初めてこの蔦温泉を訪れた桂月は、すっかりほれ込み、足繁く通った末に大正14年には本籍をこの地に移すのである。風光明媚な土佐に生まれ、日本中を旅し、各地の美しい風景をその目で眺めてきた作家がついには本籍を移すほどにこよなく愛した場所、それが蔦温泉なのだ。

蔦温泉

蔦温泉のお湯

蔦温泉旅館は、源泉の真上に建てられている。浸かっている浴槽の真下からお湯が湧いているのである。気泡と共に湧いてくるお湯を心地よく感じながら、素晴らしく透明なお湯にのんびりと浸かっていれば、心も身体もゆるやかに溶けていくだろう。日帰り入浴も出来るが、人が多くどうしても混雑してしまうので、出来ることならばやはりゆっくりと滞在し、心行くまでお湯を楽しみたい。

蔦温泉
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食事

豊かな自然に抱かれた蔦温泉ならではの、付近で獲れた山菜やきのこをふんだんに使った心温まる料理が食事処でいただける。

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(編集部注:食事、外観、内部の様子などは訪問時のものとなります。)

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開湯は1147年とも伝えられる八甲田地方最古の温泉の一つ。ブナの原生林の中に立つ一軒宿は土地の気のよさから来るぬくもりだろうか、心地よい雰囲気に包まれている。

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Japan Web Magazine 編集部

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