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郡上八幡 郡上おどり

郡上おどり

郡上八幡 真夜中の風景

ネオンライトで煌々と輝く都市部の無粋な明るさとは程遠い、控えめな電灯と、提灯があたりをぼんやりと照らしている。

真夜中を疾うに過ぎたというのに、この人混みは何だろう。音に合わせながら体を動かし続けて数時間。眠気と疲れでぼんやりした頭で、ふと周囲をみると、まるでどこかの民話の世界に迷い込んでしまったのではないかと錯覚するほどに、夜の闇の中で人々がうごめいている。その数、十人や二十人ではない。この空間だけで百人近くはいるだろうか。その人たちが皆、笛や太鼓、唄に合わせて体を動かし、手拍子を打っている。懐かしさと些かの興奮が入り混じったこの感覚は、DNAに刷り込まれた大いなる記憶の断片か。それとも揺らぎの集合の残光か。

「清流と名水の城下町」、岐阜県郡上市の夏の風物詩として知られる「郡上おどり」は、秋田県羽後町の西馬音内の盆踊り、徳島県の阿波踊りと共に、「日本三大盆踊り」にも数えられる伝統的な盆踊り。

通常、「盆踊り」といえば、町の広場や学校、公園などで夕方から夜にかけて行われ、地元の人々や里帰りしてきた人々が櫓や屋形を中心に円になってゆるりと踊る催し。大人たちは仕事や家事をしばしの間忘れ、子供たちは普段中々出来ない夜遊び、買い食いが許される特別な時。懐かしい顔ぶれ、普段学校などで会う雰囲気とはまた違う浴衣姿、立ち並ぶ露店、揺れる提灯と、わくわくや興奮なども含有しつつ、それでもどこか長閑でこじんまりとした夏のイベント、というイメージが大きいのではないだろうか。

ところが、郡上おどりはそんな普通の「盆踊り」とは随分と趣を異にするのだ。まず、その開催期間の長さ。通常なら3日ほどの開催期間の盆踊り。郡上おどりは32夜開催される。さらに、そのうちの8月13日、14日、15日、16日のお盆の4日間は、「徹夜おどり」といって、夜っぴて人々が踊るのである。

のびやかな声、軽やかな三味線、リズムを刻む太鼓、夜空に上っていく笛の音。掛け声と手拍子。屋形を中心に、踊りの会場となる街道や辻に人々は思い思いに集まって、踊り、そして休む。インドネシアのケチャが男性的で若々しいリズミカルなトランスだとしたら、この郡上踊りの郡上節は、もう少し年齢を重ねた、中性的でゆったりとした大らかなトランスといえるだろうか。繰り返される音と唄に体をゆだねていると、途中から揺蕩うような一種独特の不思議な感覚になるのだ。穏やかな官能とでもいおうか。幽玄な微笑みと、温かな抱擁と、優しいときめきに心が揺さぶられる。

郡上おどり

「盆踊り」とは元来、亡くなった人へ思いをはせ、精霊を迎え、隠世での幸せを願う、供養の意味合いを持っていた。それはいつしか、日頃の苦労や心配をしばし忘れ、自身を開放するための時間、男女の出会いなどの場としての意味合いも持つようになっていった。かつては明け方まで踊っていた地域も多く、夏から秋にかけて連日連夜行われた所もあったという。生まれた家や土地から容易に逃れることはできず、様々なしがらみや、年貢などに縛られていた人々の、つかの間の癒しと喜び。それは時に刹那的で、時に衝動的であった。江戸時代には、武士やその家人に対し、盆踊りの参加を禁ずる触書が出たり、明治期には、風紀を乱すとして取り締まりの対象になったケースもあったのだ。

大人しく内省的で控えめで、自然を大事にする一方、ある種、自由闊達で「ひょうひょう」としたところもあった昔の日本人の「死生観」。「生」と「性」に対する感覚。制度や仕組みの中でがんじがらめでありながら、人として、どうにも抑えきれない衝動。内側から迸る情念、情動。

様々なものが機械化され、便利になって、綺麗になって、手軽になった現代においてもなお、人間の本質は変わらない。ゆるやかな恍惚状態でゆっくりと揺れる想念は、時や空間を越えて混じり合う。

例年、お盆の4日間の「徹夜おどり」に参加する人は、地元の人と外からやってきた人をあわせ、のべ25万人にのぼるという。清らかな水の流れる美しい町で、真夜中に踊る事。それは体験したもののみが知ることの出来る特別な出来事なのだ。

郡上おどり郡上おどり

郡上おどりの詳細

郡上踊りの会場と参加方法

郡上おどりの「徹夜おどり」の会場は、吉田川にかかる宮ヶ瀬橋付近の本町、新町、橋本町界隈の路上、辻となる。郡上節を演奏する人々が乗った屋形を中心に、踊りの輪、列ができているので、気になったらいつでも参加してみよう。飛び入りおよび、離脱は自由なので、見よう見まねで踊りのふりを覚えたら参加してもいいし、とりあえず輪や列に加わってみて、周囲の人々に迷惑にならないように踊りながら振りを覚えてもいい。郡上おどりの曲は、「かわさき」「春駒」「三百」「ヤッチク」「古調かわさき」「げんげんばらばら」「猫の子」「さわぎ」「甚句」「まつさか」の十曲あり、それぞれ振りは異なるが、基本的にシンプルな動きの繰り返しが多いので、なんとなく真似をしながら覚えることができるだろう。

郡上おどりの会場へのアクセス

会場へは、長良川鉄道越美南線郡上八幡駅から北東方向へ約1.3キロメートル、徒歩で約20分ほど。沢山の人が同じ方向へ歩いているので迷うこともないと思うが、不安な場合は周囲の人に尋ねてみよう。徹夜おどり開催の日は、徹夜臨時列車も運行されている(下り出発:午前1時30分、午前3時30分、午前4時55分)。

車でアクセスする場合は、早めに到着するのがおすすめだ。会場周辺には1700台分ほどの駐車場が用意されているが、午後7時ともなると市街地の駐車場は満杯になることが多い上、交通規制も敷かれるので注意が必要だ。駐車料金は、駐車場によっても異なるが、軽・普通車一回1000円~。オートバイ300円。

郡上おどり 関連リンク

郡上おどり 徹夜おどり会場および周辺交通案内図(pdfファイル)
長良川鉄道列車時刻表

撮影場所

JAPAN WEB MAGAZINE Tomo Oi

浅草在住。ウニとホヤと山と日本酒をこよなく愛しています。落語好き。

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