笑内駅

笑内駅

マタギの里の駅

その字面を見ていると、何となくほっこりとしてしまうような思わず笑顔になってしまうような名前。のんびりでほわっとした佇まいの小さくて愛らしい駅。秋田県の山間部、町のおよそ94%を森林が占める自然豊かな場所にその駅はある。駅の名は「笑内」。秋田県北秋田市阿仁にある秋田内陸縦貫鉄道の駅だ。「笑内」と書いて「おかしない」と読む。音を聞いて、北海道の地名の由来に多少知識のある方なら、なんとなく察しがつくだろう。この「笑内」もアイヌ語から来ているといわれる名前だ。

アイヌ語で「ナイ」は「水が緩やかに流れる、洪水などをあまり起こさない穏やかな川」という意味を持つ。(例えば、北海道の地名で言うと稚内、岩内、尻岸内、木古内、幌加内、朱鞠内、中札内などだ。ちなみに流れの激しい川は「ベツ」という。登別、芦別、江別、当別、幌別、女満別、紋別、遠別、浜頓別、湧別など。)笑内はアイヌ語で「オ・カシ・ナイ」で「川岸(または川下)に、小屋のある、川」という意味になる。その「オ・カシ・ナイ」がいつしか、おかしない=笑内となった。「オカシナイ」というサウンドに、「笑内」という漢字を一番最初に当てた人は誰なのかはわからないが、中々のセンスではないだろうか。

この笑内駅のある阿仁はマタギの里として知られるところだ。秘境とも呼べる山深い場所にあって、この地の人々は冬になると山に入り、熊を獲って暮らしてきた。狩猟に出かける前から身を清め、準備をし、そして何日も山の中に篭って狩をする。シカリと呼ばれる頭領を中心に、ムカイマッテと呼ばれる見張り、追い込む勢子、そして鉄砲を撃つブッパとそれぞれに課せられた責務を全うし、協力して獲物を取る。そこには、行為としての「狩猟」だけではない、昔から伝わる智慧や知識、決まりごとや儀式、そして自然や獲物に対する感謝の念、畏怖、尊敬などがある。必要以上に獲らない。必要以上に入らない。荒らさない。自然を「支配」するのではなく、自然と共に生き、自然に生かされるという、謙虚で奥ゆかしい「自然」な姿。往時に比べるとその数は随分と減ってしまったというが、今も冬になると現役のマタギの人々が獲物を求めて深い雪の中に分け入るそんな生活をしている。

雪に埋もれる冬のひっそりとした趣のある様相は、夏になると花の咲き乱れる可愛らしい駅へとその姿を変える。特に何があるわけでもない小さな無人駅。でも、そこにいるだけで、ちょっとだけ幸せになってしまうようなそんな駅だ。

笑内駅の魅力をフルスクリーンで見る

秋田内陸縦貫鉄道

鷹巣駅と角館駅間の約95kmをおよそ2時間40分で結ぶ。近隣の人々の大切な足になっているほか、長閑で自然溢れる風景を楽しめる路線として遠くからも旅人がやってくる。

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阿仁にある秋田内陸縦貫鉄道の無人駅。

笑内駅

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