雲間から光差す時
公開日: 2015年8月18日 | 最終更新日 2015年8月19日
雲の隙間から、穏やかな夏の日本海に光が差し込んでいる。
それはまるで、空に上っていく光の梯子のよう。いや。空から降りてくるための梯子だろうか。
少しずつ周囲の音は消えてゆき、静かな静かな時が流れる。
あまりに美味しいものを口にした時には、「!」と唸ってすぐには感想が出てこないように、
心から驚き嬉しい時には、感激ですぐには言葉が出ないように、
本当に美しい風景を見た瞬間、どうやら人は、言葉を失ってしまうようだ。
目から身体の中に飛び込んできた美しき粒子が、細胞の動きを止めてしまったかのように、
言葉を発するのも忘れ、瞬きも忘れ、身じろぎもせず、ただ海と空を見つめる。
そうして、そこにどれほど佇んでいたことだろう。数十分か、数秒か。
ふと我に返ってシャッターを二回切った。
ほどなくして、光の梯子は消えてしまった。後にはただ、静かな空と静かな海。
風の音が遠くに聞こえる。
撮影地:島根県出雲市多伎町