木の枝? いえいえ昆虫です。「エダナナフシ」
自然の造形とは、時になんと不思議で面白くて魅力的なのだろう。
動かなければ、そこにいることに気が付かなかった。茶色い木の枝が、こげ茶色の木の枝の上にもう一本落ちていると思った。いやいや、そもそもただの枝と目もくれなかっただろう。のそりと動いたことによって、「ン?」と目を引いた。目を凝らしてよく見てみるとそれは前に動いているではないか。
富士山が見えることでも知られる山梨県南巨摩郡南部町の白鳥山の山中で遭遇したエダナナフシは、写真の通り、ぱっと見た姿は枝にしか見えない昆虫だ。
胴体が木の枝の様ならば、脚も木の枝、その枯れたような色具合や質感は、まさに枝そのもの。前に突き出した細くて長い二本の触覚がかろうじて昆虫ぽさを醸し出しているが、それ以外の部分は、地面に落ちた一本の枯れ枝なのだ。
エダナナフシは、節足動物門昆虫綱ナナフシ目に属する昆虫ナナフシの一種。世界にはおよそ2500種のナナフシの仲間が生息しているといわれ、国内にも十数種ほどが生息しているが、いずれも木の枝や葉っぱに近い色や形をしている。中でもこのエダナナフシは、枝に見間違えそうな擬態という意味ではトップクラスの種だ。大きさは大人の手の平ほど。日当たりのよい雑木林などでよく見かけるが、都市部周辺にも比較的多く生息している。