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千畳敷カール

千畳敷カール

標高2600メートルの世界

一泊以上の山行に度々出かけられるような方ならよくご存知だと思うが、冬にはマイナス十度、二十度を記録し極寒の風吹きすさぶ寒冷地北海道の内陸部においてさえ桜が咲くような暖かな季節になっても、2500メートルを越す山の世界ではまだまだ雪が沢山あることも珍しくない。珍しくないどころか、場所によっては通年雪が残り、夏でもスキーが出来る場所もある。それほどまでに高山の気候は厳しく、そして過酷だ。時には命が脅かされるような場面に遭遇する事もままある。そのかわりに、そのような場所では、下界では見る事のできない満天の星空、色とりどりの高山植物が咲き乱れる美しい花畑、荘厳な日の出や夕焼け、「ハイリスク・ハイリターン」の言葉そのまま形にしたような振り幅の「絶景」を目にする事が出来るのだ。命の危険を漠然と背中に意識しながらも、張り詰めた自己の生命の燃焼とそこから放たれる光の一瞬の煌めきが、森羅万象と交じり合いながら荘厳なる大自然の中に溶け込んでゆくことを感じられるような世界。かつて、そんな場所は、体力と技術と経験を持つ一部の限られた人たちのみが行く事の出来る世界だった。ましてやそこが雪山ならばなおさらだ。

しかし、そのような場所にも比較的手軽に、気軽に、身軽に行かれてしまうのが今という時代。もちろん、頂上まで、というわけには行かないが、それでもケーブルカーやロープウェイ、リフト等を使って、例えサンダルやハイヒールでも高山の世界を体験できる。

真冬には5メートル近くの雪に覆われるここ千畳敷カールもその一つ。日本の屋根の真ん中、2956メートルの木曽駒ヶ岳を筆頭に3000メートル近い山々が並ぶ中央アルプス(木曽山脈)の山の一つ宝剣岳直下に広がる椀状をした谷だ。

「カール」とは日本語では圏谷といわれる氷河の浸食作用によって出来た広い谷の事。スプーンでざっくりとえぐったような形状が特徴で、見晴らしが良く、迫る峰々と削られた山肌そして転がる岩、と迫力の景観を目にする事が出来る。夏には高山植物のお花畑が広がる場所も多く、シナノキンバイ、ハクサンイチゲ、コバイケイソウ、チングルマなどの花々が咲き乱れるまさに夢のような光景が広がる。

空から見たアルプスの山々

空から見たアルプスの山々

涸沢カールの花畑

涸沢カールの花畑

千畳敷と麓のしらび平がロープウェイで結ばれたのは1967年(昭和42年)の事。この日本で最も高い所にあるロープウェイのお陰で、それまで限られた人たちのみが目にする事のできた千畳敷カールの魅力がより身近となった。ロープウェイの千畳敷駅にはホテルも併設されているので、宿泊も可能。身近に3000メートル近くの峰々を感じながら、満天の星空を眺めるといった高山の世界を誰でも気軽に体験出来るのだ。

雪の千畳敷カールの魅力をフルスクリーンで見る

千畳敷カール

千畳敷カール

千畳敷カール
千畳敷カール
千畳敷カール
千畳敷

千畳敷カールへは標高1662メートルのしらび平からロープウェイに乗って7分30秒。外の景色を眺めている間に標高差950メートル、岩と雪と風が支配する標高2600メートルの山岳世界へ到着だ。麓にあるヒカリゴケで有名な光前寺のしだれ桜が満開になる頃でも、依然ここには白銀の世界が広がっている。

千畳敷カール

サギダルの頭(左)と宝剣岳(中央)と千畳敷カール

宝剣岳

宝剣岳(標高2,931m)

1811年(文化8年)に下諏訪の寂本法師が山頂に重さ7貫目(約25kg)の錫杖を奉納したことから、錫杖嶽(岳)とも呼ばれたこの山は、古来より山岳信仰の対象の山であった。剣ヶ峰とも呼ばれたが現在は宝剣岳の名が一般的。鋭く尖った岩峰がまさに剣をイメージさせる。千畳敷カールから見上げると比較的近く容易に行かれそうな印象を受けるが、宝剣岳北側のコル乗越浄土からは急峻な岩場や鎖場が続く難所。その頂上はまさに剣のごとく、人一人がやっと立てるほどの尖った岩だ。滑落事故も起きているので、アタックの際は、服装と装備を整えて臨みたい。

千畳敷カール

千畳敷カール

   

千畳敷カール
千畳敷カール
千畳敷カール
千畳敷カール

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千畳敷カール
千畳敷カール
千畳敷カール

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駒ヶ岳神社

雪に埋もれた駒ヶ岳神社。社全体が姿を現すのは例年6月以降の事だ。神社の後ろに聳えるのはサギダルの頭。ちなみに2012年5月18日の千畳敷の積雪量は230センチメートル。暖かくなるとみるみる雪は解けていくので、積雪の千畳敷カールの風景を見たいのなら、あらかじめロープウェイ千畳敷駅ホテル千畳敷に問い合わせするのがオススメだ。

千畳敷カール
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南アルプス

千畳敷から眺める南アルプスの山々。(写真をクリックで拡大。)

千畳敷から見る南アルプスの山々。左から甲斐駒ヶ岳、仙丈ケ岳、北岳、間ノ岳、農鳥岳、塩見岳と3000メートル級の山々が並ぶ。天気がよければ、農鳥岳と塩見岳の間に富士山も見る事が出来る。

ホテル千畳敷

ホテル千畳敷ロープウェイ千畳敷駅の建物に併設されているホテル千畳敷は日本国内最高所で営業するホテル。客室は全室和室で16室あり、食堂や風呂などを完備している。眼前には中央アルプスでもっとも美しい天空の大パノラマが開けている。夏の千畳敷カールは色とりどり高山植物に彩られ、その上にそびえる峻険な宝剣岳の偉容を目指すアルピニストの姿、そして秋には山頂から山麓へ、美しい紅葉が降りていく景色が楽しめるのもここ、千畳敷ならではの魅力。標高2600メートルの場所で入る、清らかな天然水を豊富に使用したお風呂も最高だ。

  • 場所: 長野県駒ヶ根市赤穂1
  • 営業: 通年(宿泊不可の日あり・要問合せ)
  • 時間: チェックイン 14:00~ チェックアウト 9:00
  • 入浴時間: 16:30~21:00(B1大浴場)
  • 食事時間: 夕食18:00/朝食7:00(1F食堂)
  • 料金: 1泊2食付 2名一室13,200円~(時期により変動あり)
  • クレジットカード : 不可
  • 客室数: 和室 16室
  • 問い合わせ: 電話番号 0265-83-5201 予約0265-83-3844(受付時間 8:30~17:00)
  • Website: ホテル千畳敷
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