知床
公開日: 2007年4月12日 | 最終更新日 2022年11月3日
知床・羅臼岳 日本の世界遺産
知床半島
大空を一羽の鳥が翔けている。風に乗ってヒューイと舞う。上昇し、狙いを定めて急降下する。森がしばしざわめき、そしてまた静かになる。
その瞬間は、きっと音もなくやってくる。まばたきをしている間に、身体は宙に浮いていく。鏡面の様になめらかで、青く透明な湖面にきらきらと日光は輝き、5月の木漏れ日の様に優しく静謐な時がはらはらと降ってくる。風は呼吸を忘れていた。身体は透けていた。美しさの向こう側には、そう簡単にはたどり着けそうにない。
北海道東部、オホーツクに面した知床半島。半島中央部を千島火山帯が貫き、急峻な山が落ち込む海岸線は海に荒々しく削られている。自然豊かな北海道の地においても特に自然の豊かな地域だ。流氷と共にやってくるプランクトンが栄養源となり、魚介類は大きく育つ。豊かな海で育った鮭やマスは川を溯上し、それを狙ってヒグマやキタキツネ、オジロワシが集まり、それらの獣や鳥の排泄物や屍骸が土へと還って森の栄養となり、そうして育まれた木々の間を通り行く清流がまた海へと注ぐ。豊かで広大な海と森の大いなる食物連鎖。海は山と共に有り、山はまた海と共にある。
知床は、そんな海と山に跨って繰り広げられるスケールの大きな生態系が評価されて、2005年7月17日に世界遺産に登録された。半島の先端部には道路も通っておらず、人が容易に立ち入れない場所も少なくない。またヒグマやエゾシカ、キタキツネ、エゾクロテン、エゾリス 、オオワシ、オジロワシ、シマフクロウ、トド、シャチ、クジラ、アザラシ等、陸海空の様々な動物たちが生息する地でもある。都市部はおろかそれ以外の地域でも中々見ることの出来ない、溢れんばかりの豊かな大自然の魅力が満載の場所だ。
知床の基本データ
知床
+-で地図を拡大縮小
母なる大地の果て
知床半島は面積約56,100 ha、長さ約70キロ、幅約40キロ(最大幅部)のオホーツク海に突き出た半島。その名「しれとこ」はアイヌ語で、「母なる大地の果て」を意味する「シレトック」から来ているといわれる。北半球の中では最も低緯度で流氷を観察することの出来る場所。トド、クジラ類などの海洋生物の他、シマフクロウやシレトコスミレなどの絶滅危惧、固有の動植物が生育する地域でもある。
知床五湖
知床五湖は、知床の原生林に囲まれた幻想的で美しい湖。鏡面のような湖面に羅臼岳を始めとした知床連山や原生林が映る様はまるで映画のワンシーンのよう。ヒグマが頻繁に出没する地域でもあるので注意。
知床五湖の詳細ページへ
知床の山々
知床半島の最高峰にして日本百名山の一つでもある「羅臼岳(1660m)」を始めとして、斜里岳、知床硫黄山、海別岳、知床岳など、知床には山好きを魅了する山々が聳える。ただし、半島の先に行くほどに整備された道もなくなり、腰まである熊笹やハイマツの中を進まなければならないなど、体力、気力及び山経験の豊富な者しか中々辿りつけない秘境の地となる。
羅臼岳
羅臼岳の詳細ページへ
Japan web magazine’s recommend
羅臼岳 DATA
- 場所: 北海道目梨郡羅臼町羅臼岳
- 交通: JR釧網本線知床斜里駅から斜里バス、ウトロ温泉方面行きで50分。終点で岩尾別温泉行に乗換え25分、終点下車すぐ(岩尾別温泉ルート登山口)
- 駐車場: 有
- 期間: 4月下旬~10月(積雪期は厳しい冬山となるので経験者のみ)
- 問い合わせ: 0153-87-2162
知床の温泉
羅臼岳を主峰とする火山群に貫かれる知床半島は温泉の宝庫。無料で入れる露天風呂や野天風呂もある。
熊の湯
国道334号線沿いにある冬でも入浴可能な露天風呂「熊の湯」。氷点下の寒さの中、雪を見ながら浸かる露天風呂は格別。
- 場所: 北海道目梨郡羅臼町
- 交通:羅臼温泉下車、徒歩10分
- 入浴可能期間: 通年
- 入浴時間:24時間(ただし朝5時~7時までは清掃のため入浴不可)
- 駐車場: 有
- 泉質:含硫黄・ナトリウム・塩化物泉(硫化水素系)
- 効能:神経痛・冷え性・慢性皮膚病・筋肉痛・きりきず
- 問い合わせ: 0153-87-2126(羅臼町役場環境管理課)または0153-87-3360(知床羅臼町観光協会)
- 備考:お湯はかなり熱め
瀬石温泉
「北の国から」の撮影で有名な瀬石温泉(セセキ温泉)。満潮時には海の中に没してしまう海中温泉。
相泊温泉
地元の漁師には「どぶ湯」とも呼ばれている相泊温泉。羅臼町から20キロほど進んだ道道の終点、相泊集落にある期間限定の温泉。元々は漁師の為の簡易温泉施設だったが、ガイドブックなどで紹介され人気に。夕方は漁師や地元の人々で混み合う。
- 場所: 北海道目梨郡羅臼町相泊
- 交通:
- 入浴可能期間: 4月25日~9月30日
- 入浴時間:日の出~日の入
- 駐車場: 有
- 泉質:弱塩泉
- 効能:きりきず・ぢ病・やけど・神経痛・腰痛・慢性リューマチ・慢性皮膚病・貧血病
- 問い合わせ: 0153-87-2126(羅臼町役場環境管理課)
- 関連ホームページ:今日の相泊温泉
- 備考:波の高いときは入浴不可
カムイワッカ湯の滝
かつては秘湯の中の秘湯ともいわれたカムイワッカ湯の滝。川の中を30分歩いてようやくたどり着く。川と滝全体が流れる温泉の様相を呈している大自然の中の温泉だ。クチコミで有名となり、今では夏には観光客で賑わう。
- 場所: 北海道斜里郡斜里町岩尾別
- 交通:JR知床斜里駅から斜里バス知床大橋行きで約1時間50分、カムイワッカ湯の滝下車。そこから徒歩30分。または「ウトロ温泉ターミナル」もしくは「知床自然センター前」からシャトルバス。53分。下車後徒歩
- 入浴可能期間: 7月10日~9月20日
- 入浴時間:–
- 駐車場:–
- 泉質:酸性硫酸塩泉
- 効能:動脈硬化症、慢性気管支炎、慢性皮膚病、糖尿病、便秘など
- 問い合わせ: 斜里町商工観光課 0152-23-3131
- ホームページ:斜里町商工観光課 | カムイワッカ方面車両規制について
- 備考:専用シャトルバス以外の立ち入りが出来ない期間あり