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菜の花色に輝く土手

菜の花色に輝く土手

福岡県宗像市を流れ、玄界灘に注ぎ込む釣川は、長さ約16kmの川。「河川」としては長さも短く特筆に値する川でもないのだが、考古学的には重要な川で、縄文時代・弥生時代の古墳等が流域周辺に点在し、古代、この釣川の流れによって出来上がった堆積平野で文明が栄えたといわれている川だ。

そんな釣川のほとりを車で走っていると、橋を渡るところで、ふと黄色に輝く土手が目に入った。川全体が黄色に輝いているのではないかと錯覚するほどに、両側の土手が鮮やかな黄色に彩られている。あまりの美しさに、近くのスーパーに立ち寄り、お昼を買ってから土手に下りてみた。一歩足を踏み入れた途端に、菜の花の香りが全身を包み込む。日はさんさんと照りつけているが、暑い、というほどではなく、川面を渡ってくる風のおかげもあってか、あたりは心地よい空気に満ちている。

近所の人は見慣れているのだろうか、誰一人足を止めるものもなく、足早に通り過ぎていく。確かに、川の両側には家が立ち並び、車がひっきりなしに行きかい、エンジン音やクラクションの音が響いている。近所の人にとっては、毎年繰り返される普通の日常風景なのかもしれない。

でも、なんだろう。「絶景」とか「天空の光景」という美しさとは違うのだが、いきいきと美しいのだ。子供の頃に時間も忘れて駆け回った草むらの光景に似ているのか、懐かしい感覚も舞い降りる。淡くて和やかな美しさ。

おにぎりを食べ終わり、立ちあがって、手とお尻を2、3度軽く払ってから車の方へ戻る。さわさわと菜の花が風に揺れる。遠くの方でクラクションが二度鳴った。

撮影場所

Japan Web Magazine 編集部

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