冬の八ヶ岳

公開日: 2007年1月9日 | 最終更新日 2022年10月18日

冬の八ヶ岳と本沢温泉

八ヶ岳

圧倒的な白の威容。暴力的なまでの純粋。力強さと繊細さが零下14度で入り混じる。吹き抜ける突風に身をかがめ、ピッケルで身体を支えて耐風姿勢を取った後、風の合間を縫ってまた歩き出す。耳に入るのは、風の音と12本アイゼンの前爪が硬い雪面に刺さる音。そして己の息遣い。バラクラバのお陰で顔面は守られていても、肺に入る空気は冷たく、息苦しい。心臓から送り出される血は毛細血管の先までは届かない。少しずつ少しずつ、細胞がその活動を鈍らせ始める。指先と足先が強張り感覚が無くなってゆく。自分の身でありながら、徐々に占有感が消えてゆく。自然の一部になっていく。息をするたびに、少しずつ何かを失って、虹彩に光が入ってくるたびに、少しずつ何かが消えてゆく。心は思うほど簡単に死にはしない。涸れてしまったと思った水分はまだどこかに残っていた。潰えてしまったと思っていたものも、奥のほうでまどろんでいるだけだった。

冬の八ヶ岳の魅力をフルスクリーンで見る

八ヶ岳は2899mの最高峰赤岳をはじめとした横岳・硫黄岳・阿弥陀岳などの休火山群の総称。長野と山梨の県境に位置する。四季折々、様々な表情をみせる美しい自然と広範に渡る多彩なルートで人気だ。周辺には数多くの温泉がある。ロッククライミングやアイスクライミングのメッカでもある。

本沢温泉

八ヶ岳連峰硫黄岳への登山道途中にある本沢温泉は、通年営業の温泉としては日本最高所にある温泉だ。野趣溢れる野天風呂と24時間入浴可の内湯がある。本沢林道入り口から約5時間。

本沢温泉露天風呂「雲上の湯」

周囲に更衣室も何もない純粋なる露天風呂。零下の気温の中、雪上で素っ裸になるのには、中々思い切りが必要だが、大自然に抱かれて入る天然の風呂は実に気持ちがいい。外気温が低いと湯温も低く、真冬にはぬるくて一度中に入ったが最後、中々外に出られない事もざらだが、白銀の世界での湯浴みをのんびりゆったり楽しみたい。

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日本のほぼ中央に位置し、富士山に次ぐ広い裾野を持つ八ヶ岳。かつては富士山よりも高かったが、怒った富士の神に八つに叩き割られたという神話を持つ。夏沢峠を境に、天狗岳、縞枯山、北横岳等大河原峠までのエリアの北八ヶ岳と、赤岳、阿弥陀岳、横岳、硫黄岳を経た編笠岳までのエリアの南八ヶ岳に大別される。「八ヶ岳」エリアには実質八つ以上の山々があるのだが、「数多くの」という意味で「八つ」とつけられたといわれている。深田久弥の「百名山」には「西岳・編笠山・権現岳・赤岳・阿弥陀岳・横岳・硫黄岳・峰ノ松目」の八峰が挙げられている。