擬洋風建築
公開日: 2013年3月21日 | 最終更新日 2022年10月18日
擬洋風建築とは、幕末から明治頃に日本の各地で建築された、「日本人の大工、宮大工や左官職人らが、西洋人の建築家が設計した建物を参考に、見よう見まねで建てた西洋風の建築物」のことだ。(東京駅を設計した建築家・辰野金吾のような正式に西洋建築を学んだ人物が建てたものは擬洋風建築から除かれる。)
和洋折衷、様々な意匠や工法が混じった建築物は、文明開化、近代化の象徴的な存在として持て囃され、学校や病院、ホテル、銀行、役所などが数多く建てられた。その多くは取り壊されたり、戦災や自然災害、火災などで失われてしまったが、今も、数は少ないながらも各地に現存し、幕末から、明治、大正時代の日本の世相と雰囲気を今に伝える貴重な建築物として、国や県、市などの文化財に指定されて大切に保存されている。
現存する日本各地の擬洋風建築の主なもの
戦前には、「西洋建築の専門知識を持たない人物によって建てられた寄せ集め的な建物」という低い扱いを一部では受けていた擬洋風建築の建物だが、純和風建築にも純洋風建築にも見られない味わい、その印象的なデザインと雰囲気は、現代においてはむしろ、斬新でお洒落な一面もある独特のものだ。近年まで現役で活躍していた建物も含め、文化財に指定された後は移築されたり、改修保全工事が施され、内部を見学できる所も多い。
- 旧新潟税関庁舎 1869年(明治2年) 重要文化財 新潟市中央区
- 旧睦沢学校 1875年(明治8年) 重要文化財 山梨県甲斐市(甲府市に移築保存)
- 旧中込学校 1875年(明治8年) 重要文化財 長野県佐久市
- 旧津金学校 1875年(明治8年) 県指定有形文化財 山梨県北杜市
- 旧開智学校 1876年(明治9年) 重要文化財 長野県松本市
- 旧八幡東学校 1877年(明治10年) 登録有形文化財 滋賀県近江八幡市
- 旧済生館本館 1878年(明治11年) 重要文化財 山形県山形市
- 旧格致学校 1878年(明治10年) 長野県宝 長野県坂城町
- 旧群馬県衛生所 1878年(明治11年) 重要文化財 群馬県桐生市
- 旧東京医学校本館 1876年(明治9年) 重要文化財 東京都文京区(小石川植物園内に移築保存)
- 龍谷大学大宮学舎 1879年(明治12年) 重要文化財 京都市下京区
- 水海道小学校・旧校舎 1881年(明治14年) 茨城県常総市 (水戸市に移築保存)
- 旧開明学校 1882年(明治15年) 重要文化財 愛媛県西予市
- 旧伊達郡役所 1883年(明治16年) 重要文化財 福島県桑折町
- 金成小学校 1887年(明治20年) 県指定有形文化財 宮城県栗原市
- 旧牛窓警察署本館(現海遊文化館) 1887年(明治20年) 登録有形文化財 岡山県瀬戸内市
- 旧辰馬喜十郎住宅 1888年(明治21年) 県指定有形文化財 兵庫県西宮市
- 旧長崎税関下り松派出所 1898年(明治31年) 重要文化財 長崎県長崎市
- 興雲閣 1903年(明治36年) 県指定有形文化財 島根県松江市