柿の葉寿司
公開日: 2012年9月12日 | 最終更新日 2015年6月24日
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奈良の味覚
柿の葉寿司は、酢飯の上にさばやサケの切り身を乗せ、奈良大和・吉野地方の特産でもある柿の葉で包んだ寿司。伝統的に夏から秋にかけてのお祭りの際に作られ食べられてきた御馳走で、奈良の代表的な郷土の味覚の一つだ。
柿の葉寿司の歴史
柿の葉寿司の歴史は諸説あるが、その言い伝えの一つは江戸時代中頃にさかのぼる。高い年貢に苦しんでいた紀州(和歌山)の漁師が、年貢として納めるお金をねん出するため、熊野灘で捕れたサバを塩でしめ、山を越えて吉野の村に売りに行ったところ、ちょうど村々は夏祭りの時期であり、海のものがなかなか手に入らない山村の人々は大いに喜んだ。それ以来、夏祭りの御馳走としてふるまわれるようになったのだとか。殺菌作用のある柿の葉で包まれた柿の葉寿司は、通常よりも保存がきくこともあって、遠来の客にも愛されるようになり、いつしかその美味しさは広く認識されるようになった。今も夏が旬の柿の葉寿司だが、吉野をはじめとする各地域の道の駅やレストラン等で一年を通してお目にかかることができる。
柿の葉寿司メモ
ビタミンCをはじめ、タンニン、ルチン、グルコサイド、ケンフェロール、クエルセチンなどを含む柿の葉は、血圧安定や高血圧予防などに効能があるといわれる優れた薬草で、古くから殺菌作用があることが知られており、お茶として、また、食品を包むのに使われてきた。冷蔵庫もなく、保冷剤もなく、食品の保存があまりきかない時代から、朴葉や笹、竹の皮などと同じように、少しでも食品の日持ちを良くするために、ご飯などを包んで農作業や旅に携行するために柿の葉は用いられてきたのだ。また、柿の葉で包むことにより、食品の乾燥を防ぐ天然の「ラップフィルム」のような効果もあった。さらに香り豊かな柿の葉で包むことにより、食品に柿の葉の香りが移るという効果もある。柿の葉寿司は、保存もきき、見た目にも美しく、携帯しやすく、香りも豊かになるという、まさに先人の知恵と工夫が詰まった伝統的な一品なのだ。この柿の葉寿司、奈良以外でも、隣の和歌山や、少しスタイルは異なるが石川などでも食べられている。
石川の柿の葉寿司
柿の葉をむいて、中身を取り出す。新鮮で柔らかな柿の葉の香りが立ち上る。その爽やかな香りゆえ、柿の葉寿司をこよなく愛するという人も多いのだ。
そのまま頂いてもおいしいが、醤油をちょんとつけて頂くと、より風味が引き立つ。