あつた蓬莱軒
あつた蓬莱軒のひつまぶし
おひつの中に盛られたご飯の上に芳ばしい香りのするウナギがぎっしりと敷き詰められている。それを見た途端、長い時間待った疲れは吹き飛ぶだろう。そして、ウナギとタレとご飯の、甘みと香りが一体となった上品なハーモニーが口の中に飛び込んできた瞬間、幸せが身体を駆け巡るだろう。それはふくよかで、柔らかくて、円やか。幸せとはこの事かと再認識するに違いない。美味しいものは、目で味わい、鼻で味わい、舌で味わい、胃で味わい、そして心で味わうもの。忍耐へのご褒美は、それだけの価値があったと思わされるのに十分な素晴らしさでじんわり心の中に浸み込んで行く。
あつた蓬莱軒は明治6年創業。「あつたさん」と地元の人々に親しまれる「熱田神宮」のほど近くで長年に渡り、多くの人々に愛されてきた名店だ。創業以来継ぎ足しで使用しているタレと備長炭で焼き上げるウナギが絶品。名物「ひつまぶし」の他、肝焼き、うまき、白焼きなどもおすすめだ。
あつた蓬莱軒の登録商標にもなっている「ひつまぶし」はどのようにして生まれたのだろう。
創業当初は陶器の器に入れて出前をしていたうな丼。しかし、出前が増えるにつれ、器が割れることも多くなり、丈夫で割れない木製のおひつに入れるようになった。さらに、大勢でもとりわけしやすいようにウナギを細かくして乗せるようになり、次第に現在のような供し方、食し方になったのだという。「はじめは上質の鰻を刻む事に抵抗がありました。」と語るのは「あつた蓬莱軒」の大女将。工夫と試行の積み重ねで、現在のような多くの人に愛されるひつまぶしが出来上がったのだ。
ひつまぶしの最大の特徴はその食べ方にある。
おひつが来たら、しゃもじで十文字に切り、四等分に分ける。その一こまを茶碗によそい、まずはそのままで。
それから、葱、海苔、わさびなどの薬味と共に食す。濃い目のタレの甘みと薬味の鮮烈な香りが一体となって、そのままで食べるのとはまた一味違う味わい。
茶碗に盛ったら薬味を乗せ、今度はさらに一緒に供されるダシを注ぐ。ダシと共にさらさらとさっぱりとした美味しさを愉しもう。
最後に残った一こま分を茶碗によそい、1~3の中で一番好みの食べ方で食べよう。勿論、1~3の順番自体もお好みで。一つのおひつで4回愉しめる、これがひつまぶしの魅力なのだ。
あつた蓬莱軒 本店(蓬莱陣屋) DATA
あつた蓬莱軒
+-で地図を拡大縮小