直火でさっと炙るとぱちぱちっと小さな粒が弾けるような音がして、芳ばしい煙が辺りに立ち込めた。香りが脳のスイッチを入れる。転瞬、甘い海風が吹く。軽やかな潮の香は鼻腔を暫しくすぐって中空に消えてゆく。薄い煎餅のような食感は、ふくよかな官能を纏って、体の中に進入してくる。それは、ぱりりと砕け、そしてはらはらと浸潤してゆく。二秒逡巡しながらも、300の目玉は吸い込まれてゆく。声の無い叫びは、目くるめく落日に繋がっていた。恋は残り香こそ狂おしい。部屋に微かに残る炙り香は、首の周りにまとわりつくようにたゆたい、海馬を撫でて、そして消えていった。
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