Look beyond the cliche, reach for the real Japan
「珍味」と呼ばれる物は大概どれもそうだが、食べたことが無い人にとっては何の感慨も思い入れもなく、むしろそれを巡って騒いでいる人などを見る度に、不思議な気持ち、「何をそんなに」という純粋な疑問と少しの好奇心が頭をよぎるだけという一方で、それを大好きな人にとっては、もう仕事も何もかも、全部を投げ出してでも、味わいつくしたい衝動に駆られるものだろう。世の中には「日本三大」とか「世界三大」と冠される珍味から、知っている人も少ないような珍味まで、様々な珍味が存在するが、このカラスミはご存知の通り、「日本三大珍味」としてウニ、コノワタと並び称される「珍味」と言うよりも「美食の王様」と呼ぶにふさわしいもの。実際、製造にかかる手間隙もさることながら、その値段も上をみると驚く。質のよいものは、タラコ一房ほどの大きさが平気で一万円以上するのである。
じっくりしっとりねっとりとした濃厚にして芳醇な味わい。本物はゆっくりやってくる。深遠で、膨大でいながら奥ゆかしい。息の長い忍耐強い旨み。決して派手過ぎず、決して驕らない。じんわりと染みてゆく。じんわりと沁みてゆく。小指の先が、脳髄を幸福で満たしてゆく。指の先など、刺激が強すぎて悶えてしまう。旨みが前頭葉を支配する。そのままは勿論、さっと炙って、きゅっと冷えた「ひや」と共に。至福。絶佳。
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