透明の中に、青色と白色とオレンジ色を流し込んだような静寂。光は柔らかく微笑み、風はゆったりと頬杖を付く。たゆたう雲は佳日の記憶。ぬくもりと優しさと切なさと寂しさが同居する。郷愁は流れゆき、日は又繰り返す。そはひっそりと佇んで何を思う。遠い目をして微動だにせず。
愛媛県伊予市双海町の海岸線沿いにその駅はある。夕日の名所としても有名なこの駅から見える素晴らしい風景は、青春18きっぷのポスターをはじめ、映画やドラマ、CMなどでも使われたのでご存知の方も多いだろう。JR四国、予讃線「下灘駅」。かつて「日本で一番海に近い駅」といわれた駅だ。当時はプラットホームのすぐ下に波が打ち寄せ飛沫をあげていた。やがて海岸が埋め立てられホームと海との間に国道が通ったので「日本で一番海に近い駅」ではなくなってしまったが、現在でも海に近いことには変わりはない。プラットホームにあるベンチに座ると目の前には美しい伊予灘の海が広がり、心地よい風が吹き抜ける。