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一文字グルグル

「一文字グルグル(ひともじぐるぐる)」

この可愛らしい名前と見た目の食べ物の正体は、分葱(ワケギ)。さっと茹でて冷たい水にくぐらせた葱を、根っこの部分からぐるぐるっと巻き、酢味噌をつけていただく熊本の郷土料理だ。葱はかつて、宮中の女房言葉で「ヒトモジグサ」と呼ばれており、その「ヒトモジグサ」をグルグル巻きにするところからこの名がついたという。とはいえ、この愛嬌のある名前の食べ物が生まれた経緯は、その名前の由来の優雅さに反するもの。今から230年ほど前、熊本の藩主細川重賢が藩の財政を立て直すために藩士達に節制倹約を命じた際、酒の肴なども贅沢品として指摘されたが、そんな中で手に入りやすかったワケギを利用して考え出されたのがこの「一文字グルグル」だったという。江戸の時代、倹約の中で生み出された食べ物とはいえ、飽食の現代に頂いても決して劣るものではなく、甘味や香りが豊かで、突き出しや肴にはもってこいの一品なのだ。

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