盆灯籠 広島のお盆の風景

盆燈籠

「難波の葦は伊勢の浜荻」という表現をご存じだろうか。難波で「葦」と呼ぶ植物を、伊勢では「浜荻」と呼ぶ。物の呼び名や習慣、風習、風俗は、場所によって変わるということで、「所変われば品変わる」と同じ意味合いだ。

日本の各地を歩いていると、まさにこれを肌で感じることが多い。食材の多様性、料理や味付け、物の呼び名、風習、習慣・・・。感嘆し、驚愕し、目を見張り、感心する。同じ地域でも季節や時期によってまた見たことのないものが出現したりもして、驚きがやむことはない。

とはいえ、よそ者が中々目にすることができないのが、その土地の冠婚葬祭の様子だ。多分にプライベートな空間、儀式であり、特別な時間である冠婚葬祭は、基本的に外部の人間がひょこひょこと気軽に入っていける性質のものではないので、仮にその土地独特の風習、習慣があっても知ることは中々難しい。それでも、地元のスーパーやホームセンターなどに行くと、その断片が見えてきたりもする。というわけで、今日は広島のお盆飾りをご紹介しよう。

お盆の時期になると広島でよく目にするのが、金や赤、ピンク、青、黄色などのカラフルな色をした不思議な飾り。ホームセンターやスーパーマーケット、はたまたコンビニなどでも売られている。

他の地域ではほとんど見かけることのないこれは、盆灯籠(盆燈籠)と呼ばれるお墓などに供える飾りだ。高さは1.5メートルほどだろうか。竹の先が六角形になっていて、七夕の飾りのように色とりどりの飾りがついている。お店では一本1000円ほどで売られており、それを地元の人々はお盆の時にお墓に供えるのだ。

この盆灯籠は、この地域の浄土真宗本願寺派の門徒が広めたと言われる江戸時代から続く風習で、今では宗派を超えてお盆の飾りとして定着している。その始まりは不詳だが、一説によれば、広島城下の紙屋町に住んでいた紙屋の娘が亡くなってしまい、それを悲しんだ両親が石灯籠を建てたく思ったものの、お金がなく、代わりに紙で灯籠を作ったのだという。それがいつしか、人々の間に広まり、定着していったのだそうな。娘を思う優しい親心が、この綺麗な紙の盆灯籠には表れているのだ。

地元の人々によると、この盆灯籠が幾本も飾られた、カラフルな様相をみせるお墓にお参りしないと、お盆を迎えたという気がしないとか。ちなみに、初盆を迎えるお墓には白の盆灯籠が飾られるのが習わしだ。

興味深いのは、この盆灯籠を飾るという風習、広島県のほかは、香川、島根、山口県の一部地域で行われているだけで、ほかの地域ではほとんどみられないということ。

お盆の時期の、盆灯籠の飾られた色鮮やかなお墓の風景。まさに「難波の葦は伊勢の浜荻」。この時期、中国地方にお出かけになる予定がある方は、広島西部を走る際には、意識して見てみてはいかがだろう。

撮影場所

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