松倉山馬頭観音の仁王像

松倉山馬頭観音の仁王像

うだるような暑さの中、羽前大山駅からてくてくと歩く。暑さのせいか時間帯のためか、ほとんど歩いている人のない町は、時折車が行き過ぎる以外は静かで、のんびりとしている。

庄内藩の城下町として栄えた山形県の鶴岡市は、羽黒山をはじめ、致道館鶴ヶ岡城など歴史と伝統を感じられるスポットが点在する地。また、絶品の味わいで知られるだだちゃ豆の産地でもある。羽前大山駅はそんな鶴岡市の一角にある駅だ。

この日は鶴岡駅を出発して羽越本線でまっすぐ新潟方面に行く予定であったのだが、前日の晩飲み屋で一人飲んでいる時におかみさんに教えてもらった「麦きり」なるものを食べるために、鶴岡駅を出てわずか5分、すぐ次のこの羽前大山駅で途中下車したというわけだ。

とりあえず、地図を確認して駅から歩いて10分ほどの出羽ノ雪酒造資料館に寄った後、麦きりで有名な寝覚屋半兵エさんのある方へてくてくと歩いていく。

とにもかくにも暑いのだ。それもそのはず。昨今ではその日の最高気温、猛暑日のニュースというと埼玉県の熊谷市や、岐阜県の多治見市、高知県の四万十市などがとりあげられることがほとんどだが、2007年8月16日に熊谷と多治見が40.9度の最高気温を記録するまで、実に70年以上にわたって最高気温の記録を持っていたのがこの山形県なのだ。

汗だくになりながら、歩くこと30分。さらに20分ほど並んでようやく麦きりにありついて、この山形のソウルフード、ご当地麺を堪能した後、また再び羽前大山駅に向かって歩く。

灼熱の太陽は容赦なく頭の上を照りつける。鉄道の旅も楽しいが、夏の移動はやっぱり車にするべきか・・・と少し後悔しながら、朦朧としつつ歩いていると、ふと「馬頭観世音」と書かれた門が目に入った。何かに惹かれるように路地に入っていく。

そこには「仁王門」と大書された扁額が掲げられた門があった。その仁王門の中から眼光鋭くこちらを見ていたのが写真の仁王像だ。

まるで、暑さでぐだぐだになっていることに、「喝」と言っているかのような眼差し。流れるような線。迫力ある姿。見事な像だ。

馬頭観音は、奈良時代に全国を行脚していた行基が717年(養老元年)この地を訪れた際に、観音堂を建てたのがその始まりといわれる。仁王門は1867年(慶応3年) の築で、仁王像は高さ260センチメートル、北越大川之住 後藤重太郎定融の作と記録が残っている。

撮影場所

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