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神秘的なドラゴンブルーに魅惑される

龍泉洞

盛岡から東北東の方向に直線距離で約60キロメートル、車なら盛岡駅前から約1時間40分ほどの場所にある龍泉洞は、秋芳洞、龍河洞と共に「日本三大鍾乳洞」の一つに数えられる鍾乳洞だ。アイヌ語で「靄や霧の多い山」を意味する宇霊羅山の地中に広がっており、その総延長は判明しているだけでも3,600メートル。洞内にはわかっているだけで8つの地底湖があり、抜群の透明度を誇る深い青色の水を湛えている。

この地底湖の青色は、龍泉洞の「龍」にかけて「ドラゴンブルー」とも称される、一度目にしたら忘れられないような透明感のある美しいもので、その美しさたるや、洞内の歩道から柵越しに地底湖を覗いていると、ゆらゆらと静かに揺れる水の中に本当に龍が住んでいるのではないかと思ってしまう程なのである。

世の中には様々な色があるが、ある統計によると青色を好まない人は、赤や黄色などの色に比べて圧倒的に少なく、逆に青色を好む人の割合は、そのほかの色と比較して頭一つ抜けている。青色が多くの人に好まれる理由が、人類が海の中から生まれたからなのか、地球が青い星だからなのかはわからないが、多くの人が有意識、無意識にかかわらず、海や空の色である青色を好んでいるというのも興味深い。

確かに、龍泉洞の地底湖の水の色を見ていると、理屈ではない感覚的な何かが反応して、身体の芯から「青」に魅惑されている自分に気が付くのだ。それは、地底湖の「青色」に細胞レベルで反応している感じ、とでもいおうか。ただ、綺麗、美しい、というのとはまた違う感覚なのだ。

言葉や体験としての「記憶」にはなくとも、自分がかつて「水」の一部であった頃の、細胞の奥深くに刻みこまれた記憶のようなものが揺さぶられる。

岩手県岩泉町「龍泉洞」。溢れかえる知識と情報とテクノロジーでいつしか鈍色になってしまった身体が、ほんの少しだけ透明を取り戻したような気分になれる場所。出来るならば、なるべく人の少ない時間帯を選んで訪れてみてほしい。

撮影場所

Japan Web Magazine 編集部

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