夕暮れの海岸にて

夕暮れの海岸にて
市振海岸(クリックで拡大)

新潟県市振。夕暮れの海岸を男が一人歩いていた。

波打ち際のすぐそばを、ポケットに手をつっこんで歩いていた。楽しいことがあったのか、哀しいことがあったのか、それともただの日常なのかはわからないが、男は一人歩いていた。

冬至から二か月余り。まだまだ冬とは思っていても、次第に日は長くなっていく。時刻は既に17時を回っていた。これからまた、東京へ戻らねばならない。そろそろ出発しないと遅くなりそうだ。

突然、大きな波がやってきて、男の近くで砕け飛んだ。波しぶきが宙に舞い、夕日を受けてきらめいた。

空気は淡いオレンジ色を帯びて、静かに優しく広がっていく。防波堤にいた釣り人がしゃがみこみ、時計がまた一秒を刻む。

冬の夕暮れ、海岸を男が一人、歩いていく。男の後を追うように一羽の鳥が飛んでいく。音も立てずに空を切り、波しぶきの向こうへ消えていった。

市振

市振は、細長い県・新潟の西の端に位置する町。富山県との県境まで、1kmあるかないかの場所に位置している。県境、かつての「越後の国」と「越中の国」の国境には、1624年(寛永元年)頃に幕府によって設けられた市振の関所があった。1869年(明治2年)に廃止されるまで、街道をゆく商人や旅人を検問していた。北陸自動車道を駆け抜けていると気が付きにくいが、親不知からこの周辺にかけての一帯は、断崖絶壁が続く荒々しい地形をしている。山は海岸線のすぐそばまで迫り、難所も多く、中には船で越える旅人もいた。そのため、市振の関所では陸路のみならず、海路も監視し取り締まっていた。関所には海上監視の遠見番もあったという。

撮影場所

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