白くま

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冬に白くまを食べること

ここは、鹿児島県鹿児島市。東京や大阪、福岡と比べると南にあるとはいえ、やはり肌寒い。道行く人は、そこそこの厚着をしている。そんな冬の鹿児島での今回の取材目的の一つ、それは「白くま」なのだ。空を飛んで、鹿児島へ「白くま」に会いに来たのだ。もちろん、北極にいるあの白熊ではない。今や全国区となった鹿児島の名物スイーツ、練乳がかかってフルーツがトッピングされた豪華なかき氷の「白くま」である。

なぜ、わざわざ好き好んで寒い季節にかき氷を食べるのかって?特に大した理由はないのだ。寒い季節だけどなんだかかき氷が食べたい、とか、本当に美味しいものはきっと寒い季節でもおいしいはず、とか、そんなちょっとした理由。寒い季節に冷たいものを食べる、天邪鬼で粋な江戸っ子が聞いたらいかにも喜びそうなアイデアじゃありませんか。

というわけで向かった先は、本家白くまの店として有名な天文館むじゃき。鹿児島市の中心部にある繁華街・歓楽街「天文館」にあるお店だ。そうそう、寒い季節にかき氷を食べに行く利点の一つ。それはあまり並ばなくてもいいということ。夏場は白くま目当ての客で行列ができるというこの店も、すっと通され、すんなりと座れた。とはいえ、さすがは人気の名物スイーツ、冬だというのに店内はそこそこ混んでいる。早速お目当ての白くまを注文する。

鹿児島の名物スイーツ

ガイド本やテレビなどで紹介され、今ではすっかり鹿児島の名物として知られるようになったこの「白くま」は、1932~1933年頃に誕生したという説と、1947年頃に誕生したという説がある。(ほかにも諸説あり)。その一つは、白くまにかかっている練乳の缶に貼られたラベルに描かれていた白熊が由来になったというもの。もう一つは、トッピングをしたその様子が白熊の顔のように見えたから、というもの。この後者の説の発祥元となっているのが、喫茶店のむじゃき、現在、氷白熊の本家を謳うこちらの店だ。

白くま

注文してから5分程だろうか、目の前に運ばれてきたのは、白くてカラフルで巨大なかき氷。缶詰のみかんが乗っている。黄桃が乗っている。ぶどうにリンゴにバナナが乗っている。パイナップルにプルーンにレーズン、緑に赤の寒天たち。そして、てっぺんには真っ赤なチェリー。なんという心惹かれる見た目だろうか。30を過ぎたおじさんでも心惹かれてしまうんだもの。女性や子供ならどれほどだろう。実際、店内には黄色い声が響き渡っている。写メを取る人。右から左から、目をキラキラさせながら眺める子。どこからスプーンを入れようか、うれしさと戸惑いで、躊躇している人。目の前に実物が運ばれてくるまでは、そんな「人」たちを横目に、自分だけちょいと場違いな感じがして、居心地悪くも感じていたが、そんなものはこの「白くま」くんが運ばれて来たら、吹き飛んでしまった。もう、見ているだけでわくわくしちゃうのだ。楽しくなっちゃうのだ。あんなに大きいの、食べきれるかな?なんてさっきまでの思いもどこへやら。さあ、食べるぞ。

白くま

「さくっ」。金属のスプーンが、少しだけ溶けた氷の塊に入る感触が手に伝わってくる。うん、いい感じだ。かき氷はこうでなくっちゃ。そのスプーンをおもむろに口に運ぶ。

「ん~、うまいっ」。ほっぺたが、きゅっとなる冷たさと甘みが駆け抜けていく。ただ単に甘いだけじゃない。練乳のたっぷりとした甘味の中に、果物の甘味やら酸味やらが入り混じって、複雑な甘味になっている。それに、冷たさが乗っかって、脳にかきーんと響くのだ。旨味という名の感動と官能が、ストレートに身体に浸みこんでくるのだ。それは瞬時に喜びへと変わる。ほほが緩み、思わず知れず、笑顔になってしまう。店に入った時に店内に充満していた「ハッピー」な空気は、これが理由に違いない。「白くま」を見て、そして食べると、誰もがしばし幸せになってしまうのだ。

白くま

幸せを運んでくれる一匙。

全部食べ終わって、幸福感に包まれながら支払いを済ませ、お店を出るとさすがに寒さが身に染みた。でも、同時にシャキっと、スキッとした感じもするのだ。特に頭が冴えたような感じがする。この感覚、悪くない。寒さだって、マフラーを巻いて、温かい恰好をすれば全然大丈夫だ。いやいやどうして。寒い季節に冷たい食べ物も、案外いけるではないか。冬にアイスを食べるのが好きという人なら、賛同してくれるのではないだろうか。暑い季節に、湯豆腐を食べるようなものだろうか。いや、ちょっと違うかな。とにかく、鹿児島の「白くま」はあなたに美味しさという名の喜びを届けてくれる。目で見て舌で味わって、しばし心は「ハッピー」になる筈だ。

鹿児島の名物スイーツ「白くま」、温かい(暑い)季節は言うまでもないが、近くに立ち寄った際は、寒い季節でも躊躇せず、試してみてはいかが?

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