JAPAN WEB MAGAZINE
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雲立ち上る

八月  静岡

雲立ち上る夏の夕暮れ。標高3000メートル。世界は一瞬幻想的な色に染まる。わずか五分後に雷が再び鳴り始め、大粒の雨が降ってきた。目まぐるしく全ては変わってゆく。

阿蘇

十一月熊本

とても滑らかな水面の上を虹色の空気が渡っていく。先ほどまで顔を覗かせていた太陽も、外輪山の向こうに沈んでしまった。秋の夜長が始まる。西天に宵の明星が光り始めた。

水上

八月群馬

水上から普通列車に乗り込んで、ビールで一息つくまもなく、目は西の空に釘付けになった。先ほどまでオレンジ色に染まっていた空は刻一刻とくすんだ赤紫色に変化していく。夕日の時は雲があるほど美しいというが、まさにその通りだ。色と形を変えていく雲が、全天を妖艶な美しさで覆っていく。その美しさの中を列車は走り抜けてゆく。自身が意思を持っているかのように、ゴトンゴトンと走っていく。

 

馬籠

十二月 岐阜

昼間はあれほど混雑していたのにもかかわらず、五時を過ぎて観光客が誰もいなくなってしまった馬籠の道は、想像以上にひっそりとしていた。それは物寂しくさえあった。高台に上って西南の方向を見る。ぽつりぽつりと電気が灯っていく。これから冬の夜が始まる。さて、そろそろ家路に着こうか。

跨線橋から

七月 東京

雨上がりの跨線橋で行きかう列車を見ていた。在来線、私鉄、新幹線・・・何本もの重要なラインが走る動脈部。ひっきりなしに通り過ぎていく。大粒の雨を降らせた雲は薄くなり、空が少しずつ明るくなって大気が軽くなる。気のせいか、心も少し軽くなった。

吉野川

一月徳島

日本三大暴れ川の異名を持ち、大歩危小歩危あたりの渓谷では深い深い谷間を縫って流れる吉野川も、河口付近では幅1.3キロという広大な川となる。海と見紛うばかりの広さだ。それでいて、四万十川や仁淀川とならぶ清流でもある。そんな吉野川の夕暮れは、川に負けず劣らず美しい。

伊豆半島

十月 静岡

雲ひとつ無い空の下、石廊崎をまわり、雲見を過ぎた頃、夕刻になった。岬を二つほど回った先で車を止めて夕日を見る。右手には、海の向こうに巨大なシルエットが。富士山だ。その予想以上の大きさに少々驚きながら、眼下を行く小さな漁船を目で追った。今から出漁だろうか。その向こうにタンカーがゆるりと過ぎてゆく。

多摩川

八月 東京

昼間のうだるような暑さも、夕方になると、川から来るのだろうか、涼しい風が吹いてきて漸く人心地ついた。土手で寝転んで待っていると、次から次へと人が集まってくる。浴衣姿に団扇を持って。カキ氷があれば完璧だ。あと30分ほどだろうか。いよいよ打ち上げが始まる。

豊洲

十一月東京

秋晴れのこの日、空気は澄んで空はどこまでも高かった。夕日がその姿を隠してから十数分後、天と地の際は輝くようなオレンジ色になる。空へと続くグラディエーションが美しい。ビルの合間に目をやると、そこには日本一の山、富士山がいた。

入日

十一月 大阪

京都から関西空港に向かう途中、車は夕方の渋滞に巻き込まれた。少し進んではすぐ止まるの繰り返し。飛行機には間に合うだろうか。時間に余裕を持って出たつもりでも、少しばかりの不安がよぎる。と、思う間に、みるみる渋滞は解消し、車はスムースに流れ始めた。次に何があるかは誰にも判らない。人生はきっとこうして続いていく。