目的地に「できるだけ」早く着いて、観光し、美味しいものを食べる、勿論そんな旅もいい。しかし、乗り換え駅で買ったお弁当を食べながら、車窓の外を流れ行く景色を肴に一杯やりつつのんびりと目的地へ向かう。時には気の向くままに途中下車し、その土地の名物をつまんでみる。そんな風にして到着までの過程をもゆっくりと楽しむ、そんな旅も又いいものだ。早くつける場所へ敢えて時間をかけて旅をする。時間に追われる我々現代人にとっては、それはむしろ贅沢かもしれない。スピード競争の中でいつのまにか隅に追いやられてしまった感のある「目的地までの行程」そのものを楽しむという旅の本来の醍醐味。そもそも目的地なんてなくてもいい。旅に制約はないのだから。JWMが提案するスロートラベルのススメ。
意外と知られていないことだが、春夏冬にJRが発売する「青春18きっぷ」はその名前に反して、使用するにあたっての年齢制限はない。18歳だろうが68歳だろうが使用可なのである。また使用方法についても、一人で5日間乗車するというやり方もあれば、数人で一枚のチケットを使用するというやり方もある。そう、例えば5人で日帰り旅行、なんていうことも可能なのである。通常の発売額が一枚11500円。一日あたり2300円。つまり片道1150円以上の場所に赴くのであればお得ということだ。例えば新宿駅からなら大月や小田原、つくばあたりまで往復すれば一日の元は取れてしまうというわけだ。
使用日当日、一日毎もしくは人数分改札にて日付入り判を押してもらう。ムーンライトながら、ムーンライトえちご等夜行列車を利用する場合は日付が変わるまでの乗車券を購入、判は車内か下車する駅で押してもらう。(上記列車は別途指定券が必要。)青春18きっぷは各シーズン内のみ有効。
JR全線の普通、快速(新快速、通快、特快等) 。およびJR宮島連絡船(宮島口から宮島)。
特急(新幹線含む)・急行、グリーン車、寝台車は普通乗車券が別に必要。ただし、普通、快速列車のグリーン車自由席は自由席グリーン券のみ購入すれば乗車可。
特例で特急の普通車自由席に乗れる区間:津軽海峡線の蟹田から木古内間。石勝線の新夕張~新得間。宮崎~宮崎空港間
春休み: 発売期間:2月20日-3月31日
利用期間:3月1日-4月10日
夏休み: 発売期間:7月1日-8月31日
利用期間:7月20日-9月10日
冬休み: 発売期間:12月1日-1月10日
利用期間:12月10日-1月20日
始めから青春18きっぷを使い、大都市から地方都市へと列車を乗り継いで移動するのも悪くは無いが、それなりの労力と時間が要る。特に、混雑する時期には、行動ルートが帰省客や行楽客と重なることも多く、列車も込みがちだ。おすすめは地方までは何かしら別の移動手段を使い、ある程度都市部から離れてから18きっぷで移動するというやり方。これならば、空いている車内でボックスシートを独り占めしながら、お弁当を食べたり、車窓の外を流れ行く景色をぼんやり眺めたり、とスロートラベルの醍醐味を満喫することが出来る。
人は結局生まれながらにして孤独なのかもしれない。そして旅とはそれを再確認する作業でもあるのだろう。孤独だからこそ人を大切にし、孤独だからこそ優しさをより深く感じることが出来る。憂いても止まっても花はそこにある。
切なさは今日も消えない。哀しみは今日も止まない。旅を終えれば日常はまたそ知らぬ顔で戻ってくるだろう。それでも歌を口ずさみながら、人は動いてゆく。物事はきっと、少しずつの積み重ね。劇的に変わらなくても、何かが少し変わるだろう。
人は一人では生きてはいけない。その当たり前の事を当たり前ではないと知った時に、人は本当の心を知る。
「人は環境の生き物である」と言ったのはどこの作家だったろう。生まれ育った環境によって、その人の人格なり行動規範なり気質なりが作られるということだ。さらにその時その瞬間の環境によっても、その人の性質や思考や嗜好は変わる。楽しい人間になったり、怒りっぽくなったり、静かになったり優しくなったり。塩辛いものが欲しくなったり、爽やかなものを欲したり。ポジティブになったり、投げやりになったり。その日その時の天気や温度や風や波や自然や共にいる人間や周囲の状況によって、少しずつもしくは大きく変わってゆく。環境によって、人の心も簡単に変わってしまう。仮に根源は変わらないとしても、表面的なものは著しく環境に左右される。それはある意味、人が生物である限りごく当然の事なのであろう。それを気と呼ぶのか波長と呼ぶのかは知らないが、色々なものから発せられる何かに少なからず影響を受けるからなのだろうか。
人はだから旅に出る。日常の中で凝り固まってしまった何かをほぐすために。
誰もいない駅に一人降り立ったり。頬杖つきながら景色をぼんやり眺めたり。賑やかな中高生の集団が降りていった後のがらんとした車内でささやかな孤独を弄んだり。青い海原。どこまでも続く雪原。家々が立ち並び、犬があくびをする。規則的に鳴り響くがたんがたんという音を体に感じながら、身体は西へ東へ北へ南へ。色々な思いを胸に。列車は走り行く。切なさと虹色の記憶を載せて。