夕雲

夕雲

一瞬の茜色

夕雲夕雲

大雨が降り続き、各地で河川増水や土砂崩れが相次いだ七月中旬の山陰地方。その影響で、山陰本線は運休し、幹線道路も各所で通行止めになった。萩から益田を結ぶ191号線も通行止めとなり、仕方なく山間の道を行く。

時折、ふと雨が止み、梅雨明けも間近である事を匂わせつつ、次の瞬間、そうは行かぬとばかりにまた突如雨脚が強くなる。そんな気まぐれな空模様の中、のんびり車を走らせ、ある峠に差し掛かったときの事。

何気なく西の空に目をやると、山の稜線の少し上辺りの雲が割れ、薄ぼんやりと茜色の筋が横に走っているのが目に飛び込んできた。見る見る間に雲は薄くなり、茜の幅は広がっていく。そして次の瞬間、幻想的な眩さを伴って、山に沈む寸前の太陽が姿を現した。周囲の雲は瞬く間に金色に染まっていく。それは冷え固まった心に、柔らかい風が静かに吹き込んでくるような感覚。悲しさや寂しさとはまた違う、ただ淡々と褪せていた心に、ゆるやかにそしてしっかりと光が差し込んでくる。神々しい煌めきは優しさを従えて、世界を染めていく。

そう、それはきっと一瞬の出来事。気がつくと太陽は隠れ、残照が、着色された白黒写真のような不思議な色で雲に命を与えていた。空からは大粒の雨がまた降ってくる。やがて夜が忍び足でやってきて、光は息を潜めるだろう。全ては変わり、そして消えていく。それでも、心に灯った微かな光は消える事はない。

夕雲
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