ホヤ

ほや

ほやの刺身

海鞘(ほや)~海のパイナップル~

別名「海のパイナップル」とも呼ばれるホヤ。好きな人をして、「この世にこれほどまでに美味しいものがあるのだろうか・・・」と思わず嘆息まじりに呟かせてしまうほどに美味なる海の恵みだ。皮は分厚くて硬く、形も何かの怪獣のような不思議な形状をしているが、新鮮な身は綺麗なオレンジ色でまさに果物のような甘みとふくよかな磯の香りで大変旨みがある。成体の形からは想像も出来ないのだが、幼生はおたまじゃくしのようにすいすい水の中を泳いでいるという。まさに「海の神秘」だ。

宮城県石巻市をはじめとする三陸沿岸部が名産地として知られよく食されているほか、青森や北海道などでも流通している。生で刺身や酢の物で食べることが多いが、茹でたり焼いたりフライにしたり、燻製にしても食べる。ちなみに珍味として有名なバクライ(莫久来)はこのホヤとこのわたを塩辛にしたもの。ボイルしたものや乾燥の物などがお土産として売られており、いずれも酒飲みに大変重宝がられる極上の「肴」だ。

ほや

ボイルほや

ほや

ほや酔明(乾燥ほや)

ほや

ばくらい(ほやとこのわたの塩辛)

そもそも「ほや」って?

そのインパクトのある見た目と、独特の風味から、「食べず嫌い」や「一、二度口にしたけどあまり得意でない」という人もいるであろう「ほや」。そもそも「ほや」とはなんだろう。

ほや(海鞘)は、尾索動物(びさくどうぶつ)と呼ばれる海の生物で、成体になると海底などの岩に張り付き主にプランクトンなどを食べて生活している生き物。世界には実に2300種以上もいるという。国内に棲息しているのは百数十種。このうち食用として流通しているのは主に「マボヤ」と「アカホヤ」(エゾボヤ)で、「アカボヤ」(エゾホヤ)はそのほとんどが天然もの、「マボヤ」は天然ものと養殖ものがある。

北海道

全身を覆う被嚢(ひのう)と呼ばれるグローブのような固くて濃赤色をした皮は、幼生が岩に付着してから形成されるもの。始めは数ミリほどの大きさで、3~4年かかってこぶし大の大きさに成長する。その形はごつごつとした、まるで宇宙からやってきたかのような不思議で印象的な形状だ。中にはたっぷりと水分を含んでおり、捌く際は気を付けないとこの水分を飛び散らせることになる。

ほや

ほやは、三陸沿岸部では古くから食用とされてきた。その味は「海をそのまま食べる」とも表現される豊かな潮の香りに満ちたもので、甘み、苦味、塩味、酸味といった様々な味が混ざり合う複雑な風味を持つ。と同時に、少し舌に残る軽いえぐみのような独特の香りと味が特徴で、これが好き嫌いを激しく分ける要因にもなっているのだ。ちなみに地元の業者の話によると、鮮度の良いものはほとんど臭みもないとか。

ほや

三陸のスーパーで売られているほや。鮮度の良いものが1個100円ほどで売られている。「ほや好き」にとっては天国のような場所だ。

ほやの旬

ほやの産卵期は晩秋から春にかけてでその時期は漁獲されず、主な漁期は4月から10月頃まで。温かくなると身が厚くなり、うまみ成分も増して味もよくなるという。特に美味しくなるのが5月から8月頃のものだ。ほやの旬を表す表現として、「藤の花の咲く頃がほやの旬」とか「ほやはきゅうりと食え」というものがあるのだとか。

また、ほやは何と言ってもその鮮度が命。鮮度がいいものならば、独特の臭みも少なく、食べやすい。芳醇な「海の風味」を楽しみたかったら、是非鮮度の良いものを。

ほやの食べ方

新鮮なものは、刺身で頂ける。頭部の突起を切り落とし、縦方向に包丁を入れて外側の固い皮をはがして中の身を取り出し、内臓を取り除いたらさっと洗って、一口大に切ってお皿へ。三杯酢に入れて頂くのも美味。家庭や店では、中に含まれる水分と共に提供される場合も多い。

ほや

ほや

ほや

ほやの刺身

ほやの栄養成分

その見た目と、肴としての旨味ばかりが注目されがちなほやだが、消化、吸収が早い優秀な動物性たんぱく源という一面もあり、実は「海のミルク」牡蠣に勝るとも劣らない栄養価の高い食べ物だ。疲労回復効果や集中力を高める効果、がんを抑制する効果があるともいわれるグリコーゲンを豊富に含む(牡蠣の約2倍)ほか、同じく疲労回復効果や、成人病予防効果があるとされるタウリンや、鉄分、ビタミンB12等も豊富に含み、美容と健康にもよい食べ物ともいわれている。また、ほやに含まれるプラズマローゲンと呼ばれる成分がアルツハイマー症の予防に効果があるという研究結果も発表(東北大)され、注目されているのだ。

ほや豆知識

ほやを食べた後に水を飲むと甘い?

ほやを食べた後に水を飲むと甘い、とよくいわれる。あなたが酒飲みならば、ほやを食べている時はもっぱら日本酒やビールを楽しんでいる場合が多いと思われるが、もし思い出したら一度、ほやを食べた後に水を一口飲んでみてほしい。何とも言えない甘いような旨いような感じがすることだろう。これは、ほやに含まれるうまみ成分であり、甘み成分でもあるグリシンやアラニンなどの作用だとか。

ホヤは貝?

鮮魚店などでたまに「ホヤ貝」と表記してあるのを見かけるが、ほやは貝ではなく動物。それも我々人間と同じ脊椎動物に近い種であるといわれているのだ。上でも触れたとおり、幼生の頃はオタマジャクシのように水中を泳ぐほやは、カエルに近い存在だ。進化論では、海から陸上に生物があがったとされているが、もしかしたら、陸上にあがった脊椎動物の始めはほやだったのかも?!

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