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乳頭温泉郷 鶴の湯温泉 憧れの秘湯へ

鶴の湯温泉

雪に抱かれた秘湯

雪は時に交通を麻痺させ、家屋や木々を破壊し、生物の命さえも奪う。その冷たさとその重たさ。その破壊力。しかしその一方で、雪ほど世界をあっという間に一変させ、そこに静けさと美しさを与えるものもない。ましてや、無雪期にも美しい場所に、雪が積もった時のその美しさときたら。

秋田県仙北市。日本一の深さを誇る田沢湖から程近くに烏帽子山という山がある。標高1487メートル、別名を乳頭山といい、秋田駒ケ岳に連なる山である。この山の麓に広がる乳頭温泉郷にあるのが、おそらく日本一有名であろう秘湯「鶴の湯温泉」だ。怪我をした鶴がこの温泉に浸かってその傷を治していたのを地元のマタギ(猟師)が見つけたのが、その名前の由来という。1638年(寛永15年)に秋田藩主「佐竹義隆」が湯治に訪れたとの記録も残る由緒ある温泉だ。

鶴の湯温泉

大自然に抱かれて入る乳白色の広い混浴露天風呂が魅力だが、鶴の湯温泉の魅力はそれだけではない。なんといっても趣きのあるその雰囲気である。

盛岡方面から国道46号線を右折(秋田方面からは左折)、国道341号線からさらに県道へ入るとしばらく登りが続く。鶴の湯の看板を始めとした幾つかの宿の看板が道路沿いに見え、彌(いや)が上にも気分は盛り上がる。たざわ湖スキー場エリアを横目に、ほどなくすると見えてくるのが鶴の湯への林道の入り口。林道に入ると途中右手に、鶴の湯の別館「山の宿」があり、さらに奥へと2キロほど入ると見えてくるのが目指す鶴の湯温泉である。

江戸時代、藩主が湯治に訪れた際に警護の武士が詰めていたという本陣、築100年以上の建物がそのまま残っている。萱葺き屋根、黒塗りの板壁。何処か別世界に紛れ込んだような空間。落ち着いた風情の漂う集落の様でもある。

鶴の湯温泉の魅力をフルスクリーンで見る

鶴の湯温泉
鶴の湯温泉

右に「田沢湖 乳頭温泉郷 秘湯鶴の湯温泉」、左に「本陣 鶴の湯」と書かれた門を過ぎ、奥へと歩む。向って左側が江戸時代からあるという本陣の建物、右側が三号館、二号館。本陣の奥にフロントがあり、さらに斜め左奥方向に一号館、隣に新本陣、一号館の奥に東本陣という造り。湯ノ沢という渓流が流れ、橋を渡った奥に、右手から順に、中の湯、混浴露天風呂、白湯、黒湯、そしてその奥に女性専用露天風呂がある。直径にしたらおよそ百数十メートルくらいだろうか、癒しと幸せの空間がゆったりと凝縮されてそこにあるのだ。

初めて訪れる人々は、門のところで思わず嘆息するかもしれない。特に雪の夜など、お伽噺の国に迷い込んだかのような、静謐で美しい光景。そして奥に足を進めるにつれ、両側から漏れ出てくる光の柔らかさと温かさに、思わず知れず心もほんわかと温かくなっていくかもしれない。そうして受付の辺りまで来た時に、ふと右手方向から白い気体がゆうらゆうらと空へと昇っていくのに気がつくだろう。それは幻想的極上空間。その気体はきっと温泉の湯気だけではない。人々の嘆息と心地よさと幸せが、「嗚呼、極楽かな」という言葉と共に大気に溶け出て空へと昇っていくのだ。鶴の湯温泉を包み込んでいる幸せの空気はきっと、そんな人々の嘆息が集まったものなのだ。

鶴の湯温泉の魅力はそれだけに留まらない。受付の人を始めとする宿の人々の笑顔。そして、食事だ。決して豪華絢爛、百花繚乱というような料理ではない。しかし、心のこもった料理、素朴ながらも丁寧に作られた品は、温泉と同じくらい幸せを与えてくれる。特に名物の芋鍋の美味しさ。山の料理にありがちな塩辛さがなく、あくまでまろやかでマイルドな味。温泉で温まった心と体がさらにぬくぬくほっこりと温まる。

日帰り入浴も勿論悪くはないが、機会があれば是非ともゆっくりと鶴の湯温泉で過ごしてみてほしい。一人で訪れてもいい。恋人同士や夫婦、家族、気のおけない仲間同士で、和やかな時を過ごすのもいい。本を読んだり、考え事をしたり、書き物をしたり、酒を飲んだり。昔話に花を咲かせたり、将来の話で盛り上がったり。それぞれの人々に、それぞれの幸せの時間と空間を与えてくれる場所、それが乳頭温泉郷「鶴の湯温泉」なのだ。

鶴の湯温泉

   
    

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鶴の湯温泉
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鶴の湯温泉
鶴の湯温泉

「山の芋の鍋」

神代産の自然薯で作った鶴の湯の名物「山の芋の鍋」。薄味の自家製味噌仕立ての鍋は浸み込む美味しさ。芯まで体が温まる。

鶴の湯温泉
鶴の湯温泉

囲炉裏

本陣1~5番と、新本陣・東本陣の14,190円と16,350円の部屋には囲炉裏が付く。柔らかな炭火にあたりながら、ほっこり酒を飲むもよし。本を読むもよし。じんわりと穏やかな時が過ぎてゆく。食事時には、岩魚を炙って。

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鶴の湯温泉
鶴の湯温泉「白湯」

「白湯」

美人の湯。別名「冷えの湯」とも。硫黄ナトリウム、カルシウム塩化物等を含む炭酸水素泉。

鶴の湯温泉「黒湯」

「黒湯」

ぬぐだまりの湯。「子宝の湯」とも呼ばれる。ナトリウム塩化物を含む炭酸水素泉。天候が崩れる時は黒っぽく見えるので「黒湯」と呼ばれる。

鶴の湯温泉

「中の湯」

別名「眼っこの湯」。重曹を含む食塩硫化水素泉

鶴の湯温泉

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乳頭温泉郷「鶴の湯温泉」

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Japan Web Magazine 編集部

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