雨上がりのマングローブ林と残波岬とソーキソバ

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雨が上がって雲間から太陽が顔を出す。雨にぬれた地面がきらきらと輝く。気持ちの良い空気。三線(サンシン)の音。ざわめくサトウキビ畑。風は草の香をはらんで通り過ぎてゆく。

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夏の沖縄は人々を惹きつけて止まないが、沖縄の魅力は夏だけではない。例えば、2月の沖縄の平均気温は16.6度。東京の4月下旬の平均気温とほぼ同じなのだ。東京の2月の平均気温が6.1度だから実に10度以上暖かいということになる。(札幌の2月平均気温は-3.5度)

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この温暖な冬の気候も沖縄の魅力の一つなのである。さすがに泳ぐには少々早いが、昼間ならシャツ一枚でも過ごせる沖縄の冬。特に沖縄以北の「冬の寒さ」が苦手な人々にとってはこの温暖な沖縄の冬は魅力的だろう。柔らかい陽光の中、次第にオレンジ色に染まっていく町並み。人の少ない静かな海。冬の黄昏。物思いにふけながら、見知らぬ道を一人歩けばふとした光の瞬間に、懐かしい思いが舞い戻る。

   
    

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冬の沖縄と桜

沖縄では冬に桜が咲く。もう少し正確に言うと、ほかの地域がまだ冬である季節に桜が咲く。それも沖縄では桜前線は北上せずに南下するのである。これには桜の開花のメカニズムが関係している。桜の開花には「暖かさ」のみならず「十分な寒さ」も必要なのである。寒さの足りない沖縄では、北から寒波が南下してくるにしたがって、先に寒くなる北部から桜が花を咲かせるので、開花前線も島の北から南へと南下する、というわけだ。1月中旬に本部や今帰仁で咲き始める桜は1月下旬から2月初旬~中旬にかけて、名護や那覇、そして本島南部八重瀬と島を南下しながら次々に咲いてゆく。また沖縄の桜はその多くが、濃いピンク色の花を咲かせる寒緋桜と呼ばれる種類で、ソメイヨシノのように散りが早くなく、長ければ4週間程も咲き続けるので、比較的長い間桜を楽しむことが出来るのである。 今帰仁城跡(なきじん)、 中城城跡(なかぐすく)、末吉公園、八重瀬公園などが桜の名所として名高い。

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慶佐次湾のヒルギ林

那覇市から100キロ弱、331号線で有銘を越えた先にある慶佐次にヒルギの原生林が広がっている。広さはおよそ10ヘクタール。ヒルギとはマングローブ林を主に構成する樹種の事だ。ヒルギは海水と淡水が入り混じる河口に生える樹で、ある程度の干満の差がある場所に生息する。ここ慶佐次湾では「オヒルギ」、「メヒルギ」、「ヤエヤマヒルギ」と3種類のヒルギが見られる。満潮時には水に浸かっているが、潮が引くとマングローブ特有の湾曲して地面からにょきにょきとつきだした根(呼吸根)を見ることが出来る。中々壮観な眺めだ。周辺には遊歩道も整備されていて、ヒルギの生い茂る中を歩くことが出来るようになっている。

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常緑樹であるヒルギは、時折葉が部分的に色が変わり落葉する。ヒルギにはその植生上、脱塩機能が備わっていて葉がフィルターの役目をするといわれている。塩の溜まった葉は黄色くなりやがて落ち葉となる。

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明るかった空が俄かに掻き曇り、ぽつりぽつりと大粒の雨が降ってくる。ちらほらといた観光客や課外授業らしき学生もどこかへ避難したのだろう、いつのまにか誰一人いなくなった。南国特有の湿った重たい空気。ゆっくりと生暖かい風が抜けてゆく。辺り一体に立ち込めていたヒルギ林の深緑の気は益々濃くなったかのように、重みを増してそこにある。生命の粒子が空気中に充満している。真冬とはいえども雨は生ぬるく、それでも多少の清々しさを傍らに連れて、気の向くままに地面に降りてくる。後から後から降りてくる。遊歩道が次第に濡れて、黒くなってゆく。

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慶佐次湾のヒルギ慶佐次湾のヒルギ慶佐次湾のヒルギ
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ひとしきり雨は降り続けて、やがて空は明るさを取り戻す。しとどに濡れた木々たちは身震いして、その葉や枝についた水滴を落とすかのようにざわめいている。白い鳥が一羽、水の中に立って遠くを眺めていた。昔の日々を懐かしむかのように、静かにそうして立っていた。「今」はやがて「昔」になり、「感情」は次第に「記憶」に変わってゆく。あんなに笑っていたのに、それは肌をかすりもしない。雨が降って雨が止み、水が流れて海になる。時は静かに流れゆき、鳥は静かに前を見つめる。

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冬の午後。それは黄色くなったヒルギの葉のように、ふわり落ちて流れていった。音も立てずに、痕跡すら残さずに。ふと何気なく左に目をやると、干潟にぽつんと小舟が1艘取り残されていた。

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ソーキそば

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その土地の美味しいものが食べたかったら、その土地の人々が通う店に行け、というのは鉄則だろう。この鉄則は一部の例外を除いて世界のどこに行っても適用される。そして殆ど外れることはない。地元の人々が足しげく通う店は大概美味しいのだ。

名護にある「宮里そば」もそんなお店の一つ。ナゴンチュと呼ばれる地元名護の人々に愛され、ウチナンチュである沖縄の人々に愛され、今や日本中からやってくる観光客にも愛されている店だ。月並みな表現だが、さして飾り気もない衒いもない店内。よくある町の食べ物屋さんといった風情。でも実に居心地が良い。ざっかけな雰囲気が実に親しみを覚える。一人で入っても気後れすることもないし、わいのわいのと何人かで言っても変に気疲れすることもない。毎日でも通いたくなる、そんな店だ。観光客が増えすぎてあまり人気が出すぎるのも地元の常連さんにとっては考え物だなと思わせる店も多い中、ここは四方に窓のある開放的な空気と店のお客さんの人のよさ、そしておばあたちの笑顔で、店全体が和気藹々というか自由闊達というか、何かこう各人独立していつつもプラスの共通意識で包まれているというか、そんな感じなのだ。この理由は運ばれてきたそばのスープを一口飲むとわかる。言葉は要らない。理屈もいらない。美味しいものは人を幸せにするのだ。

ソーキそば特集

残波岬

残波岬は那覇から車で約1時間、読谷村の西北端にある岬。高さ約30メートルほどの断崖がおよそ2キロに渡って続いている。晴れた日には慶良間列島を眺めることが出来る。冬には特に強い風が吹き、大きな波がひっきりなしにぶつかる荒々しい場所だが、同時に素晴らしい夕日のスポットでもある。潮が引いて岩場に溜まった数多の潮溜まりに夕方の太陽の温かい光が反射してオレンジ色に煌めく様は実に感動的。白亜の灯台と日が暮れて徐々に薄紫色に変わっていくそのコントラストも美しい。

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ついぞ数時間前に大粒の雨を降らせた分厚い雲はどこかへ去ってゆき、今はただ紫色の空の色を透明な身に映しこんでいる。どこにいても今日という日は暮れていき、何をしていても時間は刻々と過ぎていく。首を傾げても空の色は変わりゆき、目を閉じていても太陽は西に沈んでいく。そして日は又昇る。一日がまた続いてゆく。シンプルで刺激的な繰り返しが、複雑で扇情的な繰り返しが、一体あと何回続くのか。

美しい戸惑いは、きっと空と海との境目にあった。

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2月の沖縄の風景

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