通潤橋

通潤橋

想い通じて田畑潤う

その橋は人を渡す橋ではない。水を渡す橋である。その上には欄干も柵も無い。おそるおそる身を乗り出して、その高さに思わず身がすくんでしまう。

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通潤橋

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熊本県山都町。阿蘇の外輪山の南側、美しい田園風景の広がる地に石組みの堂々たる橋がある。1854年(嘉永7)にできた日本最大の水道橋「通潤橋」(重要文化財)だ。長さ約75m、高さ約22m。その名を知らぬ方でも、橋中央部の放水口から水がアーチ型に豪快に噴き出すその姿は写真や映像でご覧になったことがあるのではないだろうか。

通潤橋

かつて白糸台地は水の便が非常に悪い荒地であった。対岸には川が流れているのに、轟渓谷を挟んだ白糸台地には水の流れがなく、農耕に適さない。飲み水にも困る始末。ある時、矢部郷(通潤橋付近一帯の名称)の惣庄屋(そうじょうや)「布田保之助(ふたやすのすけ)」は、轟渓谷の流れ(通潤橋の下を流れる)を見おろしながらふと思う。「対岸の川の水をどうにかして、こちら側まで引くことは出来ないだろうか・・・。」そこから通潤橋の歴史が始まったのである。

     

通潤橋

対岸から白糸台地に水を通すための樋の建設は、付近の農民達の悲願でもあった。しかし、技術的な面や金銭的な面において、問題は山積で中々実現には至らなかったのである。それらを不撓不屈の精神で布田保之助は解決していった。ほうぼうに足を運び、寄付を募って資金を集め、また農民達に呼びかけて労働力も集めた。樋の形状は石橋である。肝心の石工は旧知の岩永三五郎に依頼する。実は布田は17歳の時に、雄亀滝橋(おけだけばし・・通潤橋の原型といわれる)完成時に岩永に会っている。そして自分が庄屋になった暁には是非石橋をかけてもらいたいと依頼をしていたのである。それから月日は流れゆき、ようやく念願かなってこうして橋の建設が具体化したのは35年後のことであった。

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資金が集まり、労働力も集まったが依然問題は残っていた。川から台地へ渓谷をまたいでそのまま橋をかけるのでは、あまりに巨大になりすぎて労働力も資金も足りない。かといって渓谷のところだけ橋をかけるのでは、橋の所まで降りていった水をまた台地の高さまで引き上げなくてはならないという難問が出てくるのである。

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ではそれをどのようにして解決したか。「連通管」を使い、一度低所まで落とした水を、圧力を用いてまた高所まであげるといういわゆる「サイフォンの原理」を応用した仕組みを使うことにしたのである。当時としては画期的なことであった。それまでも小規模なものは存在したが、これほどまでに大掛かりなものは前例が無かったのである。

通潤橋

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水管を工夫し、橋の石組みを工夫し、試行錯誤の末に、述べ30000人が働いてようやく通潤橋が完成したのは20ヶ月後のこと。

完成時の一つのエピソードがある。橋の足場が取り除かれ、いよいよ通水の時である。橋の中央部には襟を正し、懐に短刀を持った布田保之助が座っていた。もし、工事が失敗、水が対岸まで行き通らなかった場合には、橋を去らずに切腹して責任をとる覚悟だったのである。役人の合図で取水口の門が開けられ、水がどんどん流れ込んでゆく。緊迫の時。

やがて、「わぁー」っと、対岸で村人の歓声があがった。橋を通り抜けた水は、吹き上げ口からほとばしり出て、白糸台地へ勢いよく流れて行く。誰もが手を叩きあって喜びを分かち合った。布田保之助も涙を流して完成を喜び、人々の苦労をねぎらった。そして、水門から流れ出る水を手の平に掬い、押し戴くようにして飲んだという。

通潤橋

通潤橋を通った水は、8つの村を潤し、田畑に水を供給。その水のお陰で、荒地も開墾されていった。橋の上を走る3本の水管は現在も使われており、約100ha以上の水田を潤している。有名な放水は本来は管内に溜まった土砂を取り除くために行われるもの。水の必要な農繁期をさけて行われる。

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一人の人間の力は小さくとも、ある目的に向かって皆の力が合わさった時に出来上がるものの、素晴らしい例を見ることが出来る。勤勉と創意工夫、人々の智慧と知識、そして何より名工と称えられた肥後の石工達の技術。それらの結晶は、人々の夢の架け橋となって、今日も清らかな水を対岸の台地に運び続けている。

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通潤橋の上は歩けるようになっている。冊などはないので注意。

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