あんこう鍋

鮟鱇 あんこう「七つ道具」

アンコウ

アンコウは日本全国いたるところで水揚げされる魚だが、その本場として有名なのが茨城だ。ドブ汁とも呼ばれるアンコウのみで作る汁ものや野菜やキノコを入れて作る鍋は、昔から地元の漁師達に寒い季節でも体が温まる食べ物として重宝されてきた。底引き網にかかったアンコウをぶつ切りにして、味噌で味をととのえ漁の終わりに船上や浜で食べるのである。アンコウの旨みが染み出した汁は体中に染み渡り、しばれた身体を温める。実際、寒風吹きすさぶ日に、昆布とアンコウの骨からとった出汁に、七つ道具と呼ばれるアンコウの各部位(身、皮、水袋(胃)、肝(肝臓)、ヌノ(卵巣)、えら、トモ(ひれ))と野菜を入れて、ハフハフと食べるその味は一度味わったら病み付きになる。アンコウは味がよいだけではなく、DHAやEPAなど、不飽和脂肪酸やビタミンA・Eを多く含み身体にも良い魚なのだ。

あんこう

アンコウは元々売り物にならない雑魚の扱いをされる魚であった。水深100~500メートルの深海に生息し、網にかかって水揚げされた時には、ぬるぬるとしてしっかりとした形がなく、見た目もグロテスク。初めて食した人は実に勇気があると思わせる風貌。しかし、「魚は顔が不味ければ不味いほど、味はいい」という定説通り、このアンコウ、食してみると以外にうまかった、というので漁師達が食べるようになる。売り物にもならなかったようなこのグロテスクな魚は、始めは漁師のみがその味を知る素晴らしい滋養食材だったのだ。それがいつの頃からか漁師以外の人々の知るところとなり、世の中に広まっていった。勿論、常陸の国以外でも、海であればアンコウはあがるだろうし、それはそれぞれの地の漁師の口に入ったことだろう。だが、太平洋に面したここ常陸の国は特にアンコウの水揚げが多く、自然と名物になっていった。そして、アンコウはいつしか、私達の口にも入るごく一般的な食材となった。冬になるとこのあんこう鍋を食べられる幸せ。特に酒飲みを唸らせるアン肝の味。漁師さん達にはただただ感謝敬服するのみである。

アンコウの吊るし切り

アンコウは体の80%が水分といわれるぷるぷるの魚。表面も粘膜で覆われているのでぬるぬると滑る。そのため普通にまな板の上で捌くことは出来ないので、あごの部分を金具で吊るして捌く「吊るし切り」にする。まずトモと呼ばれるひれを切り取ってから、口に沿って筋目をいれ、お腹の側から一気に皮をはぐ。さらに腹を割いて内臓(肝、水袋(胃)、ヌノ(卵巣)やえらを傷つけないように取り、最後に身を取る。達人になると、トントンと関節部分に巧みに包丁を入れながら、ものの数分で捌いてしまう。

雑食・悪食で知られるアンコウ。捌いた胃袋の中を見てみたら、様々な魚介類は勿論、カモメやウキなどが出てきたという話もザラにあるそうだ。また、アンコウには所謂共食いというか、産卵期のメスがオスを食べるというカマキリと同じような習性があるという。身体もオスよりもメスの方がはるかに大きい。そんなわけで、産卵期のメスのアンコウの胃からは、同じアンコウが出てくることも珍しくないのだそうな。

ドブ汁

本来、ドブ汁とは、一切水を使わずに沢山のアンコウを使って、アンコウから出る水分だけで調理するという濃厚なものだが、食卓やお店では通常、昆布でとった出汁にアンコウの骨を加え、醤油や味噌で味付けをして食べるのが一般的。とはいえ茨城まで行けば、本物のドブ汁を味わうことの出来るお店もあるし、ドブ汁の作り方もそれ程難しくないので、新鮮なアンコウが手に入ったら、自分流に調理してみるのもおススメ。基本的には、アン肝を焦がさないように弱火で炒り、水分(脂分)が出てきたところに、アンコウのその他の部分と大根を入れ、煮込んで味をつけるだけ。水分が足りない場合はお酒や少々の水を足すとよい。茨城の主なアンコウの水揚げ港は、平潟、久慈浜、大洗など。その他下関や福島などでもアンコウは水揚げされる。

茨城といえば、多くの人が思い浮かべるのが、水戸黄門に納豆。しかし、一度(ひとたび)本場茨城で新鮮なアンコウを食したら、それ以降「茨城」と聞いたら「あんこう鍋」を思い浮かべるようになること間違いなしだ。

アンコウ鍋

Japan web magazine’s recommend

+-で地図を拡大縮小

Share