東尋坊

東尋坊

東尋坊の魅力

無骨で鈍重な迫力は透明な美しさを孕んでいる。荒々しさと美しさ。それは決して対義語ではない。岩を削り、命を削る逆巻くような運命の力と、たゆたうような透明はきっと同じ世界に存在できるのだ。

重たく垂れ込める空の下、むき出しの岩肌に荒波が砕け散る。波の花が風に舞う。すすり泣くように、泣き叫ぶように風は吹き、後には虚無と静寂が残る。灰色の暗さの中に透き通った美しさが広がる冬の海。昼間だというのに人っ子一人いない崖の中腹に、へばりつくように雑草が揺れていた。初めて訪れた冬の東尋坊は、それなりの衝撃をもって目と心の中に飛び込んできた。哀しみとも切なさとも違う何かがじんわりと、心の隙間に染み入るように入り込んできた。それは午後3時を過ぎると暗くなってしまう冬のスコットランドで見た景色に似ていた。

あれから何年経っただろうか。久しぶりに訪れた東尋坊は穏やかに微笑んでいた。それは温かい陽気のせいもあったのだろう。荒々しく岩に当たって砕け散る波さえも、冬のそれとは明らかに違っていた。穏やかな光は波しぶきをきらきらと輝かせ、太陽の風を浴びて鳶が大空を舞っていた。

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東尋坊

福井県の北西、九頭竜川を挟んで福井港の北側に位置する東尋坊は、地質学的にも珍しく世界的に見てもこれ程の規模のものは貴重といわれる「輝石安山岩の柱状節理」だ。柱状節理とは地殻変動やマグマが冷えていく過程で出来上がる柱状の岩のことで、国内では他に玄武洞(兵庫県豊岡市)、七つ釜(佐賀県唐津市)、高千穂峡(宮崎県西臼杵郡高千穂町)、奥武島の畳石(沖縄県久米島町)、三段壁(和歌山県白浜町)、層雲峡(北海道上川町)、枇榔島(宮崎県門川町)などが有名。

ビルの5階に相当する高さ最大25メートルの柱状節理が、幅およそ1キロに渡って続く様は壮観の一言。春から秋にかけて多くの観光客が訪れる日本海随一の名勝だ。その名は、かつてここから突き落とされたという平泉寺の僧の名に因んでいるという。乱暴者が故に憎まれて突き落とされたという説がある一方、文武両道に秀でており、恋敵に妬まれて突き落とされたとする説もある。歴史は残された者達がいかに語っていくかで、どうにでも変わってしまうという証のような話だ。

今からおよそ800年前に起きたという、その「事件」の真相は闇の中だが、景色全体が実際の闇に包まれる夜の帳が下りる前のひと時、「日本の夕日百選」にも選ばれた美しい東尋坊の夕暮れは訪れた者の心に何かを残すことだろう。

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