きしめん

きしめん

 

尾張名古屋の名物麺

つるつるとした滑らかな舌触り。豊かな鰹節の風味が鼻腔をぬけてゆく。名古屋名物として知られるきしめんは、幅広で喉越しのよい麺が特徴の麺料理。雉(きじ)の肉を使っていたので、「きじめん」が「きしめん」になったという説や、初めに紀州出身の者が作ったので「紀州の麺」が転じて「きしめん」になった、元々は中国の禅僧が伝えたもので最初は碁石の形をしていたので「碁子麺(きしめん)」と呼ばれ、形はいつしかひらうち麺になったものの、呼び名はそのまま残った、等、「きしめん」の名前の由来に関する説は様々。

中でももっともらしいのは、雉肉を使っていたから、というものだろうか。現在でもなかなかお目にかかることのない「雉肉」は、江戸時代、庶民が気軽に口に出来る食材ではなかった。そんな中、「お留め料理」と呼ばれる藩主の為の料理には鷹狩りなどで撃たれた雉が珍重されたという。特に尾張には「ひらうち麺」の名人と呼ばれ、藩主の自慢にもなっていたという料理番(料理人)がおり、雉肉を入れた麺を作っていたとか。その料理番が職を退き、一般の人々のために料理を作るようになった際、雉肉の替わりに手に入りやすい油揚げを用いたのが今の名古屋きしめんの始まりとされている。いずれにせよ、江戸時代中頃~末期にはすでに今のきしめんに近いものが食べられていたようだ。初めはごく一部の者が食べていた麺料理が人々の間に広がりいつしか、尾張名古屋を代表する麺料理の一つとなったのだ。

幅広の麺をすすると出汁のうまみが麺によく絡み合って口の中に飛び込んでくる。讃岐うどんのようなコシはなく、麺はむしろ柔らかめだが、それが喉越しを生み、滑らかな舌触りを生む。うどんと素麺の中間とでもいおうか、しっかりどっしりとした食感というより、つるっと食べやすい滑らかさも楽しむような麺だ。きしコロ・コロきしと呼ばれる冷たくしたバージョンもある。

 

きしめんとうどんの違い

きしめんも大きく分ければうどんの一種。使用する材料は小麦と塩で、うどんと一緒だ。麺を平たく製造することできしめんとなる。ただ、きしめんと一般的なうどんの大きな違い、それは麺を打つ時の塩分量。現在では、健康志向もあって徐々に塩分量は低めになってきているというが、かつてはきしめんを打つ際には一般的なうどんに比べて約1.5倍ほどの塩を入れていた。また、塩が多いと生地が堅くなるため、生地を伸ばす際に使う麺棒もより力が入るように細めの麺棒を使うという。平たいために茹で時間も比較的短いのも特徴だ。

 

きしめんを食べる

 

宮きしめん神宮店

熱田神宮の境内にあるお店。清らかな風の吹く素晴らしい環境の中で食べるきしめんは一味もふた味も違う。

 

名代きしめん 住よし JR名古屋駅10・11番ホーム店

新幹線のホームにあるきしめん店。ホームにあるからと侮ることなかれ、新幹線名古屋駅を利用する際は必ず立ち寄るという固定ファンも少なくないお店だ。

 

きしめんのきし仙

名古屋でも少なくなってきたきしめんの専門店。元料亭であった建物は歴史を感じさせるもの。メニューはきしめんのみだが、普通のシンプルなものからあんかけ、とろろ、カレーなど、40種類ほどある。

 

みのかま

昔ながらの雰囲気の漂う店。丹精こめて作られる麺、昆布にカツオ・ムロアジからとった出汁に無添加で上質な醤油を使ったスープが信条。きしめんは早い時間でないと売り切れることもあるので注意。

 

冨久屋

懐かしさあふれる食堂。きしめん300円という安さも魅力。

 

冨久屋本店

愛西市持中町にあるお店。弾力があって少し短めの麺が独特で、とくにざるきしめんで頂くとシルクのような食感が味わえる。ツユのおいしさも評判。

 

Memo

江戸時代に浅井了意が記した「東海道名所記」には、三河の国の芋川(現在の愛知県刈谷市今川)発祥のひらうち麺の記述があり、それが江戸に伝わったものは江戸では「芋川」転じて「ひもかわ」「ひもかわうどん」と呼ばれていたとか。ちなみに、「ひもかわうどん」は現在、群馬の桐生地域の郷土料理としてその名が知られている。

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