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舟屋

日本

海と共に生きる「伊根の舟屋」

京都府

舟屋

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Japan web magazine Home

人々は舟と共に暮らし
海と共に生きている。
かつて農耕の民が馬や牛と共に
その生活を営んだように
この集落の人々は
舟と共に暮らしているのである。
海を愛し、海を尊び、海と生きる。
そこには人々の知恵とたくましさ
そして大いなる海への愛情が溢れている。

あれはパリにむかう飛行機の中であったろうか。暇をもてあましてふと手に取った雑誌に、静かな入り江に面して木造の家が立ち並ぶ、それは美しい写真が載っていた。家々の一階部分は海側に大きく口を開けていて、漁が盛んな町の砂浜でよく見かけるスロープに横木が打たれた船着場らしきものがあり、実際何軒かの家には舟が泊まっていた。

小さい頃からの憧れであった、水に面して暮らす生活をまさに理想的な形で体現したような素敵な光景。
目が釘付けになる。
写真の下のアルファベットを目で追うと「Kyoto, Funaya」と書いてあった。

それが舟屋との出会いだった。

舟屋 舟屋 舟屋 舟屋

若狭湾に面した町、京都府与謝郡伊根町に舟屋の町並みはある。「舟屋」は日々の生活の中で必要に迫られて出来上がった機能的な建築形態で、一階部分がいわゆる「舟のガレージ」とも言うべき船着場及び漁具の格納場所になっていて、二階部分が住居になっている建物である。山がすぐ背後にまでせまり、広く敷地をとれない土地ならではの建築と言えるだろう。舟屋の持つ美しさは正に機能美なのである。

舟屋 舟屋
舟屋 舟屋 舟屋 舟屋

町を貫く海岸沿いの一本道。道の両側に家が建つ。海側がいわゆる舟屋の作りになっていて、反対側の家のすぐ裏手には山が迫る。深く入り組んだ入り江に面して、海にまさに落ち込まんとする山の縁にようやく道が引っかかっているような印象さえ受ける。道から海側の家をみると、開いたままの扉の向こうに船着場があり、さらにその先に海が見える。家の中に海が在るような錯覚におちいる。逆に海から見ると、まるで水面に家々が浮かんでいるように見えるのだ。

舟屋 舟屋 舟屋
舟屋 舟屋 舟屋 舟屋

日本海で採れる鰤を求めて舟屋から小舟で漁に漕ぎ出したという江戸時代。年貢で納められた鰤は伊根鰤として名高かった。また湾内に入り込んだ鯨を集落の人々が力を合わせて捕獲したという伝統も持つ。時代は移り、船にはエンジンがつき、漁の方法も様変わりしたが、伊根の町の人々の生活は、今日も海と共に在る。

舟屋 舟屋 舟屋 舟屋

舟屋 舟屋 舟屋 舟屋 舟屋 舟屋

伊根湾の美しい風景を眺めながら、飛行機の上の自分を思い出す。かつて、機上でまだ見ぬ伊根の美しい光景を思い浮かべながら、そこに立つ自分を想像した。体は上空2万5千フィートを漂いながら、気持ちは若狭湾の小さな町に飛んでいた。

時を経て今度は、海抜0メートルの世界で、何年も前の機上の自分を思い出していた。何万秒という時間と何万フィートという隔たりが、そこには全く存在しないかのような不思議な感覚にとらわれる。ふとした瞬間に空間が交錯し、過去の世界に迷い込んだのではないか、そんな気持ちになる。

時の流れはきっと一方向ではない。過去の自分が見る未来と未来の自分が見る過去の境目に、この美しい景色は確かに存在し、隅から隅まで飛んだと思っていてもそれは実は隣であったように、果てと果ては裏と表だ。時の流れは、この海の流れのようにきっと寄せては返すだけだ。この海に漂う流木のように、自身も流れに漂うモノであるのかと、そんな事をぼんやり考えていたら、すぐ目の前で魚がぴょんと跳ねた。

5月某日、13時15分。伊根の町は厚い曇に覆われていた。手を伸ばせば届きそうなところに、雲は重く垂れ込めていた。それでも心はなぜだか晴れていた。それは、何年も見たいと願っていた景色の中に、初めから自分がいることにようやく気がついたからなのか。
風はほのかに海苔の香りをまとって、ゆるりと山の方に消えていった。

時は流れても、変わらぬ人の思いがある。

時が流れても、変わらぬ人の心がある。

流れの中で彷徨って彷徨いながら又流れてゆく。

人はそうして何かを求め、人はそうして何かを失う。

気づかぬうちに。知らぬうちに。

ただ雄大な海だけがその答えを知る。

答えなどはじめから無いということを。

今日も舟は海に出て行く。
海と共に生きる「海人」達は
今日も海へと漕ぎ出でる。
明日のために
細胞に
命を与えるために。

舟屋 舟屋 舟屋 舟屋

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